2006 Fiscal Year Annual Research Report
質量分析法による電位依存性ナトリウムチャネルの立体構造解析と機能相関研究
Project/Area Number |
06J11463
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鈴木 宏明 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 質量分析法 / MALDI-MS / 中性糖鎖 / 負イオン化 / マトリックス |
Research Abstract |
質量分析法を用いた巨大膜タンパク質の解析にあたり、本研究では膜タンパク質を分解して得た断片化ペプチド、ならびに翻訳後修飾により付加された糖鎖についてMALDI質量分析を行うことを計画している。質量分析法を用いて化合物の構造情報を得る上で、イオン化した化合物の正/負双方の帯電状態が大きく影響し、中でも負イオン化した生体物質の断片化解析は、従来一般的に用いられている正イオン解析とは異なった構造情報を反映した断片化スペクトルが得られるため、生体化合物の構造解析の上で有用である。しかし、中性化合物の効率的負イオン化は正イオン化に比べて一般に困難なケースが多い。そのため、中性生体物質の効率的イオン化を検討することは本研究の遂行には有用と考え、種々条件検討を行った。 生体化合物の中で、とりわけ負イオン化が困難であった中性糖鎖に注目し、それらの効率的負イオン化のための検討を行った。中性糖鎖はMALDI質量分析法でイオン化する際、脱プロトン化分子[M-H]^-が非常に不安定であり、生成直後に分解してしまうという点が解析を困難なものにしていたが、クロリドイオン付加分子[M+Cl]^-は安定であり、分解することなく観測される。クロリドイオン付加分子生成のために、マトリックスにβ-carbolineの一種であるハルミンを用い、クロリド源として塩化アンモニウムを用いた。種々の条件検討の結果、塩化アンモニウムをハルミンに対して過剰量添加した時に、イオン化効率は増加し、従来報告されていたイオン化効率の10倍近い改善に成功した。従来、マトリックスに過剰な塩を添加することは、化合物のイオン化を阻害する要因として考えられていたが、本研究の結果は全く正反対の結果が得られた。この理由として、過剰に加えた塩がマトリックスと複合体を形成し、塩酸塩に変化した結果、マトリックスの光化学物性が変化してMALDIのレーザー源である窒素レーザー光(λ337nm)をより効率的に吸収することが可能になったためであることを種々の分光分析によって明らかにした。 この知見は、質量分析法による生体物質分析の基盤として、中性糖鎖のみならず、中性ぺプチドのような生体物質にも応用可能なものであると期待される。今後は質量分析法を用いた生体物質の断片化解析のための研究として、糖ペプチドを含めた種々の生体化合物について断片化反応の研究を進めていく予定である。
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Research Products
(4 results)