2007 Fiscal Year Annual Research Report
筋特異的ユビキチンリガーゼMURFとコネクチンによる筋恒常性維持メカニズムの解析
Project/Area Number |
06J11508
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小山 傑 The University of Tokyo, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | MuRF1 / RING-finger protein / creatine kinase / muscle atrophy / GMEB1 / HIBADH |
Research Abstract |
MuRF1は、筋細胞特異的に発現するユビキチン(Ub)リガーゼであり、筋タンパク質をUb化し分解に導くことにより筋萎縮誘導の中心的な役割を担っていると考えられている。筋萎縮は寝たきりの生活や怪我をした際のギブス固定など、様々な場面で生じる。そのため、MuRF1の機能を明らかにすることは、その予防法や治療法の確立に必須であり、また、これからの高齢化社会において極めて重要な意味を持つと考えられる。そこで、本研究では、このMuRF1の機能とその生理的意義を明らかにすることを目的として、分子レベルおよび個体レベルでの解析を行っている。 まず、分子レベルでの郷析として、MuRF1の相互作用分子を同定し、培養細胞を用いた共発現系により、その作用機序を解析した。これにより、昨年度までに、MuRF1が筋細胞内の重要なエネルギー産生酵素である筋型クレアチンキナーゼ(M-CK)をUb化し分解へ導くということを見出していた。この系によるMuRF1の基質の同定は、本研究において最もカを入れている部分であるが、本年度は、新たにMuRF1が筋細胞内の重要な転写調節因子GMEB1および必須アミノ酸バリン(Val)の代謝酵素HIBADHをUb化し分解に導くことを見出した。 一方、個体レベルでの解析として、野生型マウスとMuRF1遺伝子欠損(KO)マウスをMuRF1依存的な筋萎縮誘導条件下で飼育し、これらのマウスを比較解析することで、MuRF1の持つ生理的機能を明らかにすることを試みている。昨年度までに、MuRF1依存的な筋萎縮誘導条件として10%グルコース水および飲料水のみでマウスを飼育する条件(アミノ酸飢餓条件)を確立し、この条件下ではKOマウスで血中必須アミノ酸量が減少していること、すなわちMuRF1が血中アミノ酸量の維持に重要であるということを見出していた。本年度は、この系を用いて更に解析を行った。その結果、アミノ酸飢餓条件において、KOマウスでは野生型マウスよりも筋タンパク質合成量が多いこと、すなわちMuRF1が筋タンパク質合成を負に制御している可能性を見出した。従来、MuRF1の機能としてはUb化を介した筋タンパク質分解の昂進という視点でのみ考えられており、この、「MuRF1による筋タンパク質合成抑制」という考えは、MuRF1の機能解析に新たな流れをもたらすものと期待される。 本年度得られたこれらの知見および昨年度までの知見から、MuRF1が次のような二つの生理機能を有すると予想された。まず一つ目がATP産生酵素M-CKおよびVal代謝酵素HIBADHの分解制御による筋細胞内のエネルギー代謝制御である。一方、二つ目は、Ub化を介した筋タンパク質分解量の増加および筋タンパク質合成の抑制による、血中アミノ酸量の維持である。また、この筋タンパク質合成の抑制は、一部は転写調節因子GMEB1の分解制御を介した転写レベルでの制御によりなされていると考えられる。これらのことから、MuRF1がエネルギー代謝制御および血中アミノ酸量の維持という機能を介し生体の代謝恒常性維持に寄与している、とのモデルを提唱し、投稿論文としてまとめた。これは、J.MoL.Biol.に受理された。
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Research Products
(5 results)
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[Journal Article] Muscle RING-Finger Protein MuRF1 as a connector of Muscle Energy Metabolism and Protein Synthesis2008
Author(s)
Koyama, S., Hata, S., Witt, C.C., Ono, Y., Lerche, S., Ojima, K., Chiba, T., Doi, N., Kitamura, F., Tanaka, K., Abe, K., Witt, S.H, Rybin, V., Gasch, A., Franz, T., Labeit, S., and Sorimachi, H.
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Journal Title
Journal of Molecular Biology 376
Pages: 1224-1236
Peer Reviewed
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[Presentation] 筋特異的RINGタンパク質MuRF1による筋細胞内エネルギーおよびタンパク質代謝制御2008
Author(s)
小山 傑, 秦 勝志, Witt C.C., 小野 弥子, Lerche S., 尾嶋 孝一, 土井 菜穂子, 北村 ふじ子, 田中 啓二, Wtt, S.H., Rybin, V., Gasch, A., Franz, T., Labeit, S., 阿部 啓子, 反町 洋之
Organizer
農芸化学会2008年度大会
Place of Presentation
名古屋
Year and Date
2008-03-28
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[Presentation] 筋特異的RINGタンパク質MURF1による筋型クレァチンキナーゼの分解制御-MURF1を介した筋細胞代謝の恒常性維持機構2007
Author(s)
小山 傑, 秦 勝志, Witt C.C., Lerche S., 小野 弥子, 尾嶋 孝一, 土井 菜穂子, 北村 ふじ子, Wtt, S.H., Rybin, V., Gasch, A., Franz, T., Labeit, S., 阿部 啓子, 反町 洋之
Organizer
BMB2007 (第30回日本分子生物学会年会・第80回日本生化学会大会 合同大会)
Place of Presentation
横浜
Year and Date
2007-12-14
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[Presentation] 筋特異的RINGタンパク質MURF1による筋型クレアチンキナーゼの分解制御-MURF1を介した筋細胞代謝の恒常性維持機構について2007
Author(s)
小山 傑, 秦 勝志, Witt C.C., 小野 弥子, 尾嶋 孝一, 土井 菜穂子, 北村 ふじ子, Wtt, S.H., Labeit, S., 阿部 啓子, 反町 洋之
Organizer
第12回病態と治療におけるプロテアーゼとインヒビター学会
Place of Presentation
大阪
Year and Date
2007-08-03
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[Presentation] Muscle RING-Finger Protein 1 (MURF1) Ubiquitinates Muscle Type Creatine Kinase via for Degradation in vivo-Possible Regulation of Muscle Metabolic Homeostasis by MURFI2007
Author(s)
Koyama, S., Hata, S., Witt, C.C., Ono, Y., Ojima, K., Chiba, T., Doi, N., Kitamura, F., Tanaka, K., Abe, K., Witt, S.H., Labeit, S., and Sorimachi, H.
Organizer
Xth International Symposium on PROTEINASE INHIBITORS AND BIOLOGICAL CONTROL:From single molecules to degradomics
Place of Presentation
Portoroz,Slovenia
Year and Date
2007-06-24