2007 Fiscal Year Annual Research Report
森林湿原の池沼における栄養塩動態と食物網に対するカエル目幼生の影響
Project/Area Number |
06J11512
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岩井 紀子 The University of Tokyo, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | カエル目幼生 / リター分解速度 / 栄養塩回帰 / 物質循環 / 生態系機能 / 生物多様性 / リター食水生昆虫 / 藻類 |
Research Abstract |
オーストラリアJames Cook Univ.のR.A.Alford教授に研究指導の下で、より自然に近い条件下のカエル目幼生の影響を検証するため、大型のタンクを用いたメソコズム実験を行った。幼生なし、低密度、高密度、の3処理タンクを設定し、1.水中栄養塩濃度、2.リター分解速度、3.タイル上の生育藻類量、4.水中のクロロフィル量、5.タンク全体からの羽化昆虫量、の5項目を処理間で比較した。本研究は現在進行中であるが、現在までに、目数の経過とともに、幼生添加タンクにおいて水中のリン酸濃度が増加する傾向が見られている。さらに、タイル上の生育藻類量は幼生の密度と共に増加し、幼生による摂食が行われてもなお、幼生なしの処理と同程度であることが示された。これにより、カエル目幼生が栄養塩回帰によって物質循環を早め、自身の必要分を作り出している可能性が、明らかにされつつある。 R.G.Pearson教授との共同研究によって、雨林内に敷設された人工渓流を利用して、渓流生息型のカエル目幼生とリター食水生昆虫が、リター分解速度に与える影響を検証した。その結果、幼生は高密度の時に実際にリターを分解すること、低密度であっても水生昆虫と共存すれば分解が見られ、それは各々が個別に分解した時の値からの推定値よりも高まることが示された。カエル目幼生の役割の一つにリター分解があることを証明した初めての研究成果であり、さらに、水生昆虫との相乗作用が検出されたことから、生物多様性が生態系機能(リター分解)に影響することも明らかにした。現在Pearson教授との共著として論文執筆中である。また、幼生を一定時間水中に放置し、水中の栄養塩濃度の変化を調べた。その結果、時間とともにリン酸塩の濃度が増加することが示された。栄養塩濃度の低い森林内渓流では、カエル目幼生による栄養塩回帰は大きな影響力を持つ可能性がある。
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Research Products
(3 results)