2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06J11517
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松本 桂奈 東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ゼブラフィッシュ / 発生生物学 / 筋肉形成 / Hox遺伝子 / Fgf情報伝達系 |
Research Abstract |
我々は、発見したFgf8機能欠如魚において腹部筋肉の発達位置が後方の体節にずれるという現象を発見した。この現象は,頭尾軸に沿った個性化を支配するHox遺伝子群の働きと関係があるのではないかと予想された。そこで、本年度は「Fgf情報伝達系は、Hox遺伝子群の働きを介して、頭尾軸に沿った筋前駆細胞の配置を決定している」という仮説を検証することを叢1の目的として研究を行った。 Fgf情報伝達系がHox遺伝子群の発現に関与しているか否かを調べるため、まずhoxc6aおよびhoxc6b遺伝子に着目し、その発現をFgf8機能欠如魚において調べた。その結果、両遺伝子の発現位置がFgf8機能欠如魚において、後方にずれることがわかった。次に、これらの遺伝子機能の阻害をおこなうため、モルフォリノ・アンチセンスオリゴの胚への顕微注入を行ったところ、腹部筋肉の発達が著しく阻害された。これらの結果は、上記の仮説を支持するものであった。さらに本研究の成果は、体節由来の筋前駆細胞は外因性の因子に誘導されて各々の筋肉へと分化する、とする従来の説に反し、hox遺伝子の発現という体節内因性の情報が筋前駆細胞の特定の筋肉への分化を決定するという可能性を示している。Fgf情報伝達系が、受精時から腹部筋肉が形成される受精34時間頃までのどの時期にhoxc6bの発現位置を決定しているのかを明らかとするため、野性型魚に対して発生段階の複数の時期においてFgf情報伝達系を薬理的に阻害したところ、原腸胚期から初期体節形成期までのあいだにFgf情報伝達系が正常に機能することが、腹部筋肉の位置決定を担うhox遺伝子の発現に不可欠であることが判明した。現在、これらの遺伝子の機能亢進時における表現型を調べるため、mRNAおよび強制発現用DNAコンストラクトを胚に注入し、hox遺伝子が腹部筋肉の発達に十分であるか否かの検証を目指している。
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