2008 Fiscal Year Annual Research Report
成体内神経幹細胞におけるエピジェネティックス制御の解明
Project/Area Number |
06J11532
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
姫野 絵美 The University of Tokyo, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | DNAメチル化 |
Research Abstract |
DNAのメチル化は哺乳類ゲノムに見られる唯一の化学修飾で、ヒストン修飾と共にクロマチン構造を制御するエピジェネティック機構の中心となる。体を構成するすべての細胞のゲノムにはDNAメチル化領域が存在する。各領域で細胞や組織の種類に特有のメチル化状態が形成され、これらが集合して各々の細胞や組織に固有のDNAメチル化プロファイルが構築される。細胞、組織間でDNAメチル化プロファイルを比較すると、メチル化状態が異なる領域が多数見出されることになり、こうした領域は、組織特異的DNAメチル化可変領域(Tissue-dependent and Differentially Methylated Regions,T-DMR)と定義される。本研究では、成体内神経幹細胞特異的なDNAメチル化状態を解析する基盤として、様々な組織、細胞のDNAメチル化プロファイルの解析を行った。まず、Real Time PCRを用いたDNAメチル化感受性定量的PCR法により、18種類のマウス組織、細胞間で221か所のNot I認識部位のメチル化率の定量と階層的クラスタリングを行った。さらに、当研究室で開発されたD-REAM(T-DMR profiling with restrictiontag-mediated amplification)法により、マウス肝臓、腎臓、成体脳、筋芽細胞、筋、ES細胞、胎生11.5日、14.5日の胎仔脳に由来するニューロスフィア間でDNAメチル化プロファイルを解析、比較した。申請者が神経幹細胞の増殖抑制能を明らかにしたPSP遺伝子に着目すると、本遺伝子プロモーター領域(転写開始点上流6kbから下流2.5kb)に複数のT-DMRが検出された。また、ES細胞に比べ、これらのT-DMRの中にはPSP遺伝子の発現が認められている肝臓、腎臓で共通した低メチル化領域が認められた。一方、ニューロスフィアでは、これらのT-DMRでは低メチル化傾向と高メチル化傾向を示す領域が共に検出され、他組織とは異なる特有のパターンが検出された。今後PSP遺伝子のみならず、ゲノムワイドなDNAメチル化プロファイルの比較から神経幹細胞に特異的な複数のT-DMRの検出し、成体内神経幹細胞におけるDNAメチル化状態の解析に応用できると考えられる。
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