2006 Fiscal Year Annual Research Report
ペスチウイルスの持続感染及び病態形成メカニズムの解明
Project/Area Number |
06J11533
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山根 大典 東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | アポトーシス / 先天性免疫 / 2本鎖RNA / ペスチウイルス / 持続感染 |
Research Abstract |
牛ウイルス性下痢ウイルス(BVDV)は、持続感染することで養牛農家の経営上、大きな問題となっている病原体である。持続感染状態の末、やがて致死的な粘膜病を発症するが、病態形成に至るメカニズムは不明である。BVDVの病原性や持続感染に関わる要因として、アポトーシスを介した細胞病原性があげられる。これまでに、初代培養細胞においてはウイルスRNA複製がアポトーシス誘導に深く関与しており、RNA複製に伴う2本鎖RNAの蓄積がアポトーシスの引き金であることを明らかにした。このin vitroで得られた結果を元に、BVDV持続感染牛におけるアポトーシス関連宿主因子の発現解析を試みた。免疫機構の恒常性維持に重要な器官である脾臓に着目し、宿主因子の転写量をリアルタイムPCRにより定量した結果、in vitroにおいて誘導が見られた5つの因子の内、1つを除く全ての因子が有意に誘導されていた。回帰分析の結果、ウイルスRNAの蓄積量がそれらの宿主因子の転写量と正の相関関係にあったことから、ウイルスRNA複製に伴う2本鎖RNAの蓄積がin vivoにおいても先天性免疫反応の誘導に関与している可能性が強く示唆された。更に、効率的なウイルスRNA複製に関わる宿主因子を網羅的に探索するため、酵母2ハイブリッド法を用いてRNA複製に関与する非構造タンパクと会合する宿主因子を牛腎臓由来株化細胞(MDBK細胞)由来のcDNAライブラリからスクリーニングを試みた。その結果、腫瘍遺伝子の1つが見出され、共免疫沈降により両者の特異的な結合が明らかとなった。現在、MDBK細胞においてBVDV感染によって誘導される宿主因子をDNAマイクロアレイ解析により網羅的に探索中であるのと同時に、この新たに見出されたウイルスー宿主間相互作用がウイルスRNA複製に与える影響の解析を進行中である。
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