2008 Fiscal Year Annual Research Report
ペスチウイルスの持続感染及び病態形成メカニズムの解明
Project/Area Number |
06J11533
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山根 大典 The University of Tokyo, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ペスチウイルス / アポトーシス / スフィンゴ脂質 / 先天性免疫 / 2本鎖RNA / スフィンゴシン / マイクロアレイ |
Research Abstract |
牛ウイルス性下痢ウイルス(BVDV)による持続感染は発育遅延や免疫抑制を引き起こし、養牛農家の経営上大きな問題となっている。これまでの研究により、持続感染牛の臨床徴候や先天性免疫反応レベルはウイルスRNAの蓄積量と正の相関関係にあることが判明し(Yamane et al.,2008,Vet.Microbiol.)、また、マイクロアレイを用いた解析により、ウイルス複製によって誘導されるアポトーシスは細胞型によって異なる経路を介していることが明らかとなった。線維芽細胞は細胞病原性BVDV感染によりインターフェロン依存経路が顕著に誘導されるが、上皮系細胞においては小胞体ストレス経路が強く誘導されていることを報告した(Yamane et al.,Virus Res.in press)。このように、これまでウイルス複製によって誘導される細胞応答をin vitro及びin vivoにおいて明らかとしてきたが、効率的なウイルス複製に必要な宿主-ウイルス間相互作用を解明するため、昨年度同定したスフィンゴシンキナーゼ1(SphK1)とウイルス非構造タンパクNS3との相互作用の複製における意義について解析を進めた。NS3はSphK1活性を抑制し、それがウイルス複製の増強につながることまで昨年度報告したが、更なる解析により、SphK1活性抑制によってもたらされるスフィンゴ脂質組成の変化がウイルス複製の足場形成を促進することに繋がることが示された。また、生存因子であるSphK1の抑制はアポトーシス誘導の増強にも深く関与していることが明らかとなった。以上の結果から、NS3はセリンプロテアーゼやRNAヘリガーゼとしての機能のみならず、SphK活性の抑制を介してスフィンゴ脂質組成を制御し、ウイルス複製及び細胞病原性発現に深く関与していることが示された(Yamane et al.,J.Biol.Chem.in press)。
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