2007 Fiscal Year Annual Research Report
カントにおける権利と政治-自然法論転換のラディカリズム
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06J11560
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
斎藤 拓也 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | イマヌエル・カント / 法 / 政治 / 啓蒙 / 徳 / 倫理 / 人間 / 歴史 |
Research Abstract |
今年度前半は主にカントの法論と歴史哲学的テクストの関連を検討した。彼の歴史哲学的テクストには同時代の様々な地域の思想家の発想が流れ込んでおり、啓蒙主義の最後の思想家とも言えるカントはそうした様々な発想を独自の哲学的観点で結び付けている。そのような観点の中でも、とりわけ理念を強調する側面、聖書的な歴史物語と関連付ける側面、進歩主義的な側面が重要であり、それぞれに同時代のフランス、ドイツ、イギリスの啓蒙思想の影響が見られる。このような関連については、10月にハレ・マルティン・ルター大学(ドイツ連邦共和国)のセミナーにおいて報告し、参加者から有益なコメントを得た。今後こうした背景のさらなる分析が必要である。 また、9月にはドイツにおけるカントの政治論・法論・歴史論に関する研究状況の調査のため、ベルリンに滞在し、必要な研究文献を入手した。その後、日独共同大学院プログラムの枠組みでハレ・マルティン・ルター大学に滞在し、Harald Bluhm教授の指導の下でカントの歴史哲学における市民社会の概念の解明に努めた。カントの理論では用語上、市民社会と国家は明瞭に分離されていないが、法の体系としての国家と啓蒙の場としての市民社会は概念上分けられており、それぞれの理念および役割、そしてその歴史的発展が考察されている。また歴史哲学そのものが、市民社会において語られることによってその発展を促進するという役割を果たしている。国家と市民社会の発展は相互に影響を与えていると考えられるが、このことを解明するためにはより詳細な検討が不可欠である。次年度はこれらに関する議論と研究状況を踏まえて、さらに研究を遂行する予定である。
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Research Products
(1 results)