2008 Fiscal Year Annual Research Report
カントにおける権利と政治-自然法論転換のラディカリズム
Project/Area Number |
06J11560
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
斎藤 拓也 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | イマヌエル・カント / 法 / 政治 / 啓蒙 / 徳 / 宗教 / 人間 / 歴史 |
Research Abstract |
2008年4月4日から2009年2月5目まで、受入研究者であった故・柴田寿子教授からの研究委託によって、ハレ大学のハラルド・ブルーム(Harald Bluhm)教授のもとで研究を遂行した。またこの間、ドイツ国内で合計3度、カントに関する研究資料の調査と収集を行った。今年度の研究から報告者は、カントの政治思想の特徴を理解する上で、一方で法的な諸制度による諸権利の保障が、他方で政治体制における「啓蒙」の進展が、重要な意味を持っており、前者をリベラリズム的側面、後者を共和主義的側面として把握することが可能であると考えるようになった。この二つの側面はいずれも「時間化された」ものであり、歴史において徐々に実現されるべきものとして論じられている。政治体制による諸権利の保障は政治体制の改革によって、徳の獲得は政治体制あるいは社会における「啓蒙」によって、それぞれ可能になる。こうした「時間化された」あるいは歴史哲学的なプログラムを理解する上で、カントの宗教論が重要な役割を果たすことが明らかになった。カントによれば人間の道徳化のためには、(実定)法によって行為を規制する政治体制の存在が不可欠であり、政治体制においてのみ、道徳化あるいは徳の獲得が達成されうる。こうした発想の基盤となっているのは、人間の道徳化に関する宗教論的(そして道徳哲学的)諸前提なのである。以上のように、報告者は、カントの政治思想の把握したうえで現代の政治理論におけるカントの理解を検討するという研究計画を予定通り遂行することができた。さらに上述の観点から、報告者はカントの政治思想に関する考察をまとめ、国際会議等において発表を合計3度行った。
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Research Products
(4 results)