2006 Fiscal Year Annual Research Report
言語における規範性をめぐる議論を手がかりとしたConventionの概念の分析。
Project/Area Number |
06J11562
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮内 裕貴 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | convention / 規約 / 慣習 / グライス / ルイス / 命題的態度 / シッファー / 言語 |
Research Abstract |
現在主に行っているのは、著書Conventionにおいて言語とconventionの関わりについて深く考察したデイビット・ルイスの言語観と、論文"Meaning"においてポール・グライスが提案した、「〜は、〜を意味している」という表現を我々が使うときの「意味」とは、どのように分析されるべきかというグライスの言語観とを比較してみることを主題に研究を行っている。 ルイスの考えによれば、ルイス自身の提案したconventionの一例として、グライスの行った「意味」の分析は捉えることができる。だが、このルイスの主張は正しいのだろうか。このルイスとグライスの言語観を比較するうえで、重要になってくるのは、「命題的態度」に関する問題についての考察である。その問題とは、例えば「私は、明日雨が降ると信じている」のような信念文を表明する際において、私が、「明日雨が降る」という命題に対して、信じるという関係に立っているとき、私が信じている命題(もしくは命題の内容)とはいったいどのようなものであると考えられるか、という問題である。この問題がルイスとグライスにとって極めて重要になるのは、ルイスのconventionの分析にとって、「私は、彼は大学に来ると予測する」という予測に関する命題的態度が不可欠であり、グライスの「意味」の分析においては、「私は、ある発話xによって、聞き手をyと行動させるように意図する」などと、意図の表明という命題的態度が不可欠であるからである。もしルイスとグライスとが、一見非常に似通った分析を、Conventionと"Meaning"において行っているにも関わらず、本質的に対立する立場をとっているのならば、互いの立場が対立する理由には、この命題的態度に関する考え方の違いがあるのではないか、というのが私の考察である。 さらに言えば、命題的態度に関する考察を進めれば、ルイスとグライスの対立点のみならず、言語における規範性や、意味の分析のアプローチに関しても、多くの知見が得られるのではないだろうか。そのような観点から、スティーブン・シッファーの著書The Things We Meanの検討を続けている。今後は命題的態度とconventionの概念との関わり方を、互いの概念の位置づけを通して検討するのがさらなる課題である。
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