2006 Fiscal Year Annual Research Report
シオニズムの歴史社会学-東方ユダヤ人と西欧ユダヤ人の差異と相互関係に注目して
Project/Area Number |
06J11570
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鶴見 太郎 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 歴史社会学 / ナショナリズム / シオニズム / ロシア帝国 / ソビエト連邦 / ユダヤ史 / 国際研究者交流 / イスラエル:パレスチナ:ロシア |
Research Abstract |
本年度は、上記テーマを検証していくための中心的資料となるシオニストによるロシア語文字媒体(新聞や月刊誌の記事、パンフレットや本)の収集は、マイクロフィルムも含め、イスラエル国内の図書館にあるものに関しては(現存しているものはイスラエル国内、とりわけ国立図書館に概ね揃つている)概ね完了した。新聞や月刊誌に関しては、1898年から1923年にかけての該当紙(誌)(『ヴォスホート』『ブードゥシュノスチ』『イェヴレイスカヤ・ジーズニ』『ラスヴェト』等)の記事のタイトルなどに目を通し、重要と思われる記事を複写し、読み込みを開始した。現時点ではそれに基づく明確で体系的な研究成果は出ておらず、来年度以降の課題であるが、これまでの検証から以上のテーマに関して明らかになった、あるいは示唆されたことは以下の点である。 1、調査した期間を通して、シオニズム機関紙において常にロシア帝国の政治社会やユダヤ社会に関する記述が一定のスペースを割かれており、パレスチナを目指すシオニズムが、ロシア帝国でのユダヤ人の位置についての関心を常に持ち続けていたことが窺えた。 2、アラブ人による初めての本格的な反シオニズム暴動は1920年に発生したが、その頃まで、アラブ人に関する記述はほとんど見当たらない。パレスチナに関する記述は毎号決まったスペースに書かれているが、ユダヤ人入植地の様子についての記述が大半である。ただし、とりわけ青年トルコ革命の時期には(パレスチナは当時オスマン帝国支配下にあった)、オスマン帝国(「トルコ」)やオスマン帝国のユダヤ人に関する記述がある程度存在しており、オスマン帝国という帝国の視野でシオニズムが進められていたこともまた示唆された.
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