2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06J11579
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
弓削 達郎 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 非平衡 / 局所平衡の破れ / ロングタイムテール |
Research Abstract |
電気伝導系の力学モデルを提案し、分子動力学シミュレーションを用いた解析を行うことにより、電気伝導系における非平衡状態の研究を行っている。 1.非平衡状態での1粒子速度分布を求め、局所平衡からのずれを具体的に求めた。局所平衡が破れていると、速度方向によって粒子をアンサンブルに分けたときの各アンサンブルでの運動論的温度は方向によって異なるが、これを局所平衡からのずれの大きさの指標としたとき、この指標とアンサンブル間でのエネルギーの移動量との間に比例関係が成り立つ可能性を数値実験よって指摘した。 2.流れを表す物理量の時間相関関数が長時間でベキ的な減衰を示すとき、これをロングタイムテールという。ロングタイムテールがあるとそのベキの指数によっては輸送係数の発散が起こるので問題となっていた。本研究で用いているモデルでは輸送係数の発散は起こらないこと、及び流体的なロングタイムテール(2次元系で輸送係数の発散をもたらすテール)が存在しないことをすでに示していたが、今回は電子密度と不純物密度を変えたときにロングタイムテールがどのように変わっていくのかを系統的に調べた。その結果、不純物密度を増すと流体的テールからローレンツ的テール(輸送係数の発散をもたらさない弱いテール)へとクロスオーバーすること、及びローレンツ的テールは電子数密度にほとんど依存しないことが分かった。これにより通常の電気伝導体ではそれが2次元系であっても輸送係数の発散という異常な現象は起きないことが示された。
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