2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06J11579
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
弓削 達郎 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 非平衡 / ロングタイムテール / 電流揺らぎ |
Research Abstract |
電子の速度の自己相関関数<(v(t)-<v>)(v(0)-<v>)>におけるlong-time tai1に関して詳しく調べた。Long-time tailとは相関関数が長時間領域でベキ的な減衰を示すことであり、剛体球流体においては-d/2というベキで、Lorentzモデル(ランダムポテンシャル中を1個の点粒子が運動するモデル)では-(d+1)/2というベキで減衰することが知られている(dは系の空聞次元)。電子系の言葉で言うと剛体球流体モデルは電子のみがある系で、Lorentzモデルは不純物もあるが電子間相互作用はない系になっている。申請者が提案したモデルはちょうどこれらのモデルを2つの極限として含むものになっており、多体相互作用とランダムポテンシャルが共存することがlong-time tailに与える影響を調べるのに適している。平衡状態で電子密度neと不純物密度neを系統的に変えてシミュレーションを行った結果、ne/niが小さくなるに従って流体モデルで見られるテールからLorentzモデルで見られるテールヘクロスオーバーすることが分かった。さらに、流体モデル、Lorentzモデルのそれぞれで議論されているlong-time tailの現象論(モード結合理論)的な解釈からこのクロスオーバーは電子系が流体的とみなせるかどうかのところで起こることを明らかにした。また、非平衡定常状態におけるlong-time tailに関しても調べ、平衡状態で流体的なテールが見られている系では非平衡度を強くするとテールのamplitudeが大きくなることを見出した。これは単に電子系の運動論的温度が上昇したためというのでは説明できず、時間スケールによって"温度"が異なっているということを表している。一方、平衡状態でLorentzモデル的なテールが見られている系では非平衡度を強くするとテールが出現し始める時間が早くなるということが分かった。これは非平衡度を上げると電子-不純物間の衝突間隔が短くなるのが一因であると考えられる。 また、非平衡系における何らかの普遍性を見.出すために、電気伝導系における電流揺らぎに着目した。平衡状態では電流揺らぎと小さな摂動に対する応答との間に揺動散逸関係式(S=2kTG)が成り立つが、非平衡状態ではこれは破れる。そこで、非平衡定常状態での電流揺らぎを熱揺らぎと過剰揺らぎという形に分解して普遍性が見出せないかを数値計算を用いて調べた。このとき、熱揺らぎとして熱浴の温度Tを用いた場合の揺動散逸関係式の右辺(2kTG)を用いると、過剰揺らぎがほぼゼロの領域からred〓バーするという非常にシンプルな法則を見出した。さらに、メゾスコピック伝導体で知られている電流揺らぎの表式をマクロ伝導体・〓のを用いると、この数値計算の結果とかなりよく合うことが分かった。この結果はreduced shot noiseが現れるほど非平衡度の強い命令応答理論のような外場に対する摂動論ではreduced shot noiseは決して導けない)でも成立する一つの普遍性をあらわすものであると過剰揺らぎへの適切な分解がこの普遍性を見出すための鍵となっている。また、過剰揺らぎのクロスオーバーがある種のエネルギーでの電位差と熱浴の温度との大小で決まることやreduced shot noiseの強さの指標であるFano因子が系の長さの逆数に比例していくことも分かった。
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Research Products
(2 results)