Research Abstract |
昨年度からの懸案であった,利己的系統のコロニー内頻度と増殖率の関係を明らかにする飼育実験が,飼育方法の改善と飼育期間の延長(20日→2ケ月とした)によって成功した.予測どおり,利己的系統のコロニー内頻度が増加するほど,コロニー全体としての増殖率(産出された大型幼虫,踊,新成虫の合計として測定)は有意に低下した.また,産出された子世代個体の遺伝解析(新たに開発したマイクロサテライトマーカーを用いた)によって,コロニー内では常に,利己的系統のほうが高い増殖率を実現していることも明らかになった.これは,進化ゲーム理論における「公共財ゲーム」の状況と一致する.人間以外の生物において実証的に「公共財ゲーム」を実現した研究例は,いくつかの社会性微生物でのみ知られており,全く異なる系であるアミメアリにおいても実現できたことは意義深いと思われる. また,遺伝マーカーの精度を高めるべく,新たな核マイクロサテライトマーカーの開発も,引き続き行っている.今年度は,新たにマグネティックビーズ法を用いたマーカー単離を行い,現在までに,多型の見られるマーカーを6つ得ている.他にも10数個のマーカー候補があり,現在,サンプル集団を他地域にも広げつつ,多型解析を行っているところである. 論文の投稿については,データがそろっているものから順次投稿していく予定であるが,遅れていることが反省点である,昨年度までにデータはそろっていた,利己的遺伝子型の存在を示す論文を,Proc.Roy.Soc.Lond.Bに投稿したが,残念ながらリジェクトとなった.ただ,レフェリーのコメントは概ね好意的であり,現在,指摘のあった箇所を訂正して,再度同誌に投稿するべく準備中である.
|