2006 Fiscal Year Annual Research Report
ダイニンにおける長大なコイルドコイル構造を介した情報伝達機構
Project/Area Number |
06J11587
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
今村 謙士 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ダイニン / 微小管 / コイルドコイル / モータータンパク質 / AAA+タンパク質 |
Research Abstract |
細胞骨格系のモータータンパク質はATP加水分解による化学エネルギーを利用して細胞骨格上を一方向に運動するが、一般にこの運動にはATP加水分解部位と細胞骨格結合部位との間の双方向的な情報伝達が必須である。しかし、ダイニンのATP加水分解部位である頭部と微小管結合部位であるストークヘッドとは、それらの間に存在する10-15nmにおよぶ逆平行のコイルドコイル構造、ストークによって隔てられている。本研究の目的は、ダイニンがこの長大かつ安定な構造を介しでどのように双方向の情報伝達を行っているかを解明することである。 この研究を開始するに当たっては、まずダイニンの微小管相互作用についてその性質を詳細に決定する必要があった。ミオシンやキネシンなど他の細胞骨格系モータータンパク質と比べて、ダイニンについてはこの情報が圧倒的に不足していたためである。ダイニンの微小管相互作用の定量的解析は前年度に行っていたので、本年度はこれを速度論的に解析し、ダイニンの微小管からの解離速度を求めるとともに、変異体を用いることでダイニンが複数持つATP加水分解部位がそれぞれ微小管相互作用に対してどのような影響を持つのかを決定した。 次に、コイルドコイル構造を介した情報伝達機構について解析するため、ダイニンのストークコイルドコイルに含まれる2本のαらせんのそれぞれにシステインを導入し、ジスルフィド結合によるαらせん同士の架橋がダイニンの活性にどのような影響を与えるかを調べた。その結果、ダイニンはαらせんが架橋される位置に依存して、ATP加水分解活性と微小管親和性がともに高い、ATP加水分解活性は高いが微小管親和性は低い、ATP加水分解活性と微小管親和性がともに低い、という3種類の大きく異なる活性を示した。この結果から、ストークコイルドコイルの2本のαらせんの相対位置のずれが、情報伝達の本質となりうることが示された。
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