2006 Fiscal Year Annual Research Report
「公教育の民営化」による制度改編と『日本型』私立学校制度の制度条件に関する研究
Project/Area Number |
06J11598
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
荒井 英治郎 東京大学, 大学院教育学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 私立学校振興助成法(私学助成法) / 自民党文教族 / 政策過程分析 / 私学助成の合憲性 / 憲法第89条 / 教育の民営化 / バウチャー(ヴァウチャー) / 株式会社・NPO法人立学校 |
Research Abstract |
本年度は、「公教育の民営化」による制度改編を考察していくための基礎的作業として、「新たな教育供給主体」の「先行モデル」である日本の私立学校の行財政制度に着目しながら、「政策過程分析」と「法学的分析」を中心的に行った。 本年度の研究の大要と得られた知見の概略は以下の通りである。 第一は、「人件費を含む経常費補助」の制度化に一定程度寄与したという意味で、私学政策上エポックメーキングの出来事と評される『私立学校振興助成法』の制定をめぐる政策過程を、政策形成に関与するアクターに着目しながら分析を行った。その結果、政策過程に関与した種々のアクターの中でも、政策形成に対する「自民党文教族」の影響力の大きさは無視し得ないものであり、このことは本法に限らず、1960-70年代という期間における私学政策の特質の一つとして見出すことができることを明らかにした。なお、研究の過程では、本法制定に実務的に携わった文部官僚のほか、私立大学団体関係者、私立中学高等学校団体関係者に対するインタビューの機会も得た。 第二は、「私学助成」の論理と関連する「公金支出の制限」を規定した憲法第89条をめぐる議論に着目しながら、戦後から現在に至るまで、どのように本条の解釈が展開されてきたのか、憲法学者等による法解釈論争の到達点と、政府解釈の変遷を考察することで、私学助成の現代的位相を明らかにした。そこでは、現在進行する「公教育の民営化」に伴う制度改編という現象は、立法的解決が得られたとされてきた「私学助成の合憲性」の問題を再燃させる契機を有するものであること、そして従来とは異なる論点及び図式でもって、今後新たな私学助成論争が展開されていく可能性があることを指摘した。
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