2006 Fiscal Year Annual Research Report
ミエリンにおける生理活性脂質リゾホスファチジン酸の機能解析
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06J11622
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
奥平 真一 東京大学, 大学院薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | リゾホスファチジン酸 / リゾホスホリパーゼD / サイクリックホスファチジン酸 / 悪性脳腫瘍 |
Research Abstract |
リゾホスホリパーゼD/Autotaxinは血中において生理活性脂質であるリゾホスファチジン酸(LPA)を産生する酵素として同定された。これまでに、本酵素およびそれにより産生されるLPAの生理的な機能を明らかにするために、Autotaxinの阻害抗体の確立を行い、生体内においてAutotaxinを阻害することに成功している。 これまでにAutotaxinが血液中でどの程度LPA産生に寄与しているかについては不明であった。これは血中LPAが非常に微量であり、また代謝が非常に速いため、その測定が困難であったためである。そこで固相抽出カラムおよび酵素発色法による定量を組み合せた新たな測定法を構築した。その結果、血液中のLPA濃度はこれまで考えられていたものより低く、およそ50nM程度であることを明らかにした。また上記の阻害抗体投与下においてはLPAが0となったことから、血液中のLPA産生が完全にAutotaxinにより担われていることが明らかとなった。一方でin vitroにおいてAutotaxinは別の生理活性脂質であるsphingosine1-phpshate(SIP)を産生する活性を有しているが、Autotaxinのheteroノックアウトマウスの血中SIPを抽出してHPLCにより測定したところ、野生型と変化がなかったことから、少なくとも血中SIPの産生についてはAutotaxinの寄与は小さいと考えられた。 また血清をlysophophatidylcholineとともに加温するとLPAと非常に構造の似た生理活性脂質であるcyclic phosphatidic acid(cPA)が産生されるが、抗Autoataxin抗体をもちいて免疫学的にAutotaxinをdepleteした血清ではcPAの産生が見られなくなったことから、Autotaxinが血中においてcPAの産生を担う酵素であるという全く新しい活性が明らかになった。 またこれまでの解析から、Autotaxinが悪性腫瘍に高発現していることを見いだしていたので、細胞レベルの解析をさらに進めた。マウス脳腫瘍由来の培養細胞203gのAutotaxin安定発現株を作製したところ親細胞株に比べ細胞遊走活性の向上が認められた。また内在的にAutotaxinを高発現していヒト脳腫瘍由来の培養細胞SNB78に対して、RNAi法を用いてAutotaxinの発現を落としたところ、その細胞遊走活性の著しい低下が認められた。以上の結果はAutotaxinが脳腫瘍の浸潤および転移能に寄与していることを示唆しているものと考えられる。
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Research Products
(3 results)