2007 Fiscal Year Annual Research Report
薄膜中転位を制御・利用したナノ細線デバイスの創成および機能評価
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06J11666
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
澤田 有紀 (徳本 有紀) The University of Tokyo, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 薄膜 / 転位 / 透過型電子顕微鏡 |
Research Abstract |
本研究は、薄膜中の転位を特性の起源として利用したナノ細線を含む薄膜デバイスの創成を目的としている。薄膜材料として、薄膜中に高密度な貫通転位が存在することが知られているIII族窒化物のうち、絶縁体で熱化学的に安定なAIN薄膜を選択し、(1)AIN薄膜中貫通転位の構造解析および(2)AIN薄膜中貫通転立への金属元素拡散を行った。 (1)AIN薄膜中貫通転位を利用してナノ細線を作製するにあたり、ナノ細線を作製する前の貫通転位自体の形成メカニズムおよび構造を理解することが重要である。III族窒化物薄膜の貫通転位の中でも刃状転位については、薄膜成長粒同士の微小な傾角を補償するために導入されるという、いわゆる"モザイク成長モデル"が提唱されているが、このモデルを原子スケールで支持する結果は未だ報告がない。そこで、貫通刃状転位の形成メカニズムを解明することを目的とし、AIN薄膜中に形成された貫通転位の配列を主に高分解能透過型電子顕微鏡法(HRTEM)により観察した。TEM観察の結果、約5×10^<10>/cm^2の貫通転位が観察された。これらの貫通転位の大部分は刃状転位であり、小傾角粒界状の周期配列を有していることがわかった。この結果は、"モザイク成長モデル"の直接的な証拠を示すものであった。 (2)AIN薄膜中貫通転位に沿って金属元素を拡散させ、AIN薄膜中金属ナノ細線の試作を行った。添加金属元素として、磁性など特異な物性の出現が期待できるCrおよびMnを選択した。数通りの熱処理温度および時間の条件で金属を拡散させた試料について、TEM-EDS(X線エネルギー分散分光法)を用いて組成分析を行った。その結果、特定の熱処理条件で金属元素の転位への偏析が確認された。ただし、転位における添加金属の濃度は約0.2cation%と低く、特性発現のためにはさらに高濃度な金属の偏析が望まれるため、引き続き熱処理条件の検討を行っている。
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