2008 Fiscal Year Annual Research Report
高齢者の威信と社会的ポジションに関する人類学的研究
Project/Area Number |
06J11760
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
福井 栄二郎 Shimane University, 法文学部, 准教授
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Keywords | 老い / 高齢者 / リスク / ヴァヌアツ / 文化人類学 / 近代化 / グローバリゼーション / 日本 |
Research Abstract |
本年は、日本における高齢者施設、及び認知症家族会への聞き取り調査を断続的に行い、これまで遂行してきたヴァヌアツ共和国に暮らす高齢者どの比較研究を行った。そこから得られた知見は以下のとおりである。 (1)家族や地域が生得的なセーフティネットとなっているヴァヌアツと違い、日本では主体的・選択的にセーフティネットを獲得しなければいけない。逆にそれが日本において「老いる」ということがリスクになっている証左でもある。 (2)そうしたセーフティネットや「つながり」が希薄であるからこそ、認知症家族会のような「リスクによる連帯」が今後、意義を持ちうるのであるし、「公共的なるもの」の重要性が浮き彫りとなる。 (3)日本において「老い」をめぐるリスクはますます個人化し、老いる以前に各個人がその準備を始めなくてはいけない。 (4)また、フーコーの生政治の議論と関連させて論じれば、私たちは健康で、生産に従事するよう、つまり「老い」を先延ばしするよう社会的に要請されているといえる。 (4)他方、ヴァヌアツでは、老いに対する構えがないので、リスクとは認知されていない。 こうしたことを念頭に置きながら、今後の高齢社会における「老い」のモデルを再構築していかなくてはいけないのである。これら一連の知見は、今後、学術論文として公にし、さらなる理論構築へとつなげていく。
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Research Products
(4 results)