2006 Fiscal Year Annual Research Report
高齢者の威信と社会的ポジションに関する人類学的研究
Project/Area Number |
06J11760
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Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
福井 栄二郎 国立民族学博物館, 民族社会研究部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 高齢者 / 老人 / 社会的ポジション / 近代化 / 文化人類学 / ヴァヌアツ / 老い |
Research Abstract |
平成18年度はこれまで人類学の分野で等閑視されてきた、高齢者の威信と社会的なポジション、とくに近代化との関連に関する研究を行った。研究初年度ということもあり、年度の初めは文献研究が主であったが、夏季(2006年8月〜9月)にはヴァヌアツ(Vanuatu)共和国で現地調査も実施した。まず首都ポートヴィラのヴァヌアツ文化センター(Vanuatu Cultural Centre)にて資料を収集し、内外の研究者との情報交換を行った。またアネイチュム(Aneityum)島でフィールドワークを実施し、高齢者の人々に対し、ライフヒストリーなどのインタビューを集中的に行った。 そこから明らかになったのは、これまで考えられてきたような、伝統文化に閉じこもる老人像ではなく、高齢者の人々が比較的容易に西洋近代的な制度や物品や知識を取り込んで、生活に密着させているということであった。とくに若いころに都市部で生活していた人は、高い学校教育を受け、・賃金労働のために特別な技術を体得していることが多い。こうした技術や知識は、現在、村落部での生活でも不可欠なものであり、たとえ伝統的な知識を有していなくとも、彼らの存在はとても稀有で重要なものだと認識されている。 こうした老人の処遇と近代化との関係は、研究成果として、2006年12月に首都大学東京で行われた東京都立大学社会人類学会の定期研究会で発表した。また来年度以降、学術誌への投稿、日本文化人類学会等の学会で公表する予定である。
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