2006 Fiscal Year Annual Research Report
惑星形成と多様な銀河環境を考慮した彗星雲の起源と進化についての研究
Project/Area Number |
06J11792
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
樋口 有理可 国立天文台, 理論研究部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 彗星雲 / 惑星系 / 軌道進化 |
Research Abstract |
オールト雲とは太陽系を球殻状に取り囲む彗星の巣である。オールト雲は惑星にならなかった微惑星によって形成されたと考えられている。惑星領域に残存した微惑星は惑星の重力散乱により遠方に放出され、その後、銀河潮汐力や近傍を通過する巨大分子雲や恒星からの摂動で現在のオールト雲のような軌道に進化した。 本年度では第二段階の一部である銀河潮汐力による微惑星の軌道進化についての研究をすすめた。黄道面は銀河円盤面に対して約60度傾斜しているので、黄道面内を運動する微惑星は銀河円盤に垂直な方向(z方向)の銀河潮汐力を受ける。ここでは、銀河ポテンシャルの形は軸対称に仮定し、z方向の銀河潮汐力のみ考慮する。軌道長半径が数万AUの微惑星が受ける銀河潮汐力の大きさは太陽重力の約1/1000程度、軌道進化のタイムスケールは数億年である。軸対称の摂動の下では、近点引数がπ/2または3π/2のまわりを秤動する「古在機構」と呼ばれる振る舞いを見せることがある。古在機構では軌道長半径は保ちながら離心率と軌道傾斜角が逆向きに進化するので、オールト雲になるための近日点引き上げには効果的な機構である。 このような摂動下にある微惑星の運動を永年摂動論を用いて解析的に解いた。その結果、銀河潮汐力による微惑星の軌道進化は、惑星散乱により惑星領域を飛び出した時に持つ、近点引数や軌道傾斜角に大きく依存することを示した。また、微惑星の軌道要素は周期的に振幅するが、その振幅の幅や周期は軌道長半径にも強く依存する一方、離心率にはあまり強く依存しないことを示した。これらの結果を応用しオールト雲の構造を統計的に調べた。オールト雲から惑星領域に再び戻ってくる微惑星が持つ軌道傾斜角の分布は観測から予測されるような一様分布ではなく、新彗星の形成には銀河長石力以外の外力が不可欠であることを示した。
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Research Products
(1 results)