2008 Fiscal Year Annual Research Report
血液透析患者における生体内酸化ストレス発生のメカニズムとその影響について
Project/Area Number |
06J40007
|
Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
山本 多恵 Gunma University, 大学院・医学系研究科, 特別研究員(RPD)
|
Keywords | 酸化ストレス / 慢性腎不全 / 血液透析 / 遺伝子発現 / エピジェネティク / DNAメチレーション / リスクファクター |
Research Abstract |
酸化ストレスは多くの病態や疾患に関与すると考えられているが、人体への酸化ストレスの影響を客観的に評価する方法は確立されていない。本研究では、血液透析時に酸化ストレス負荷が増大することが慢性腎不全患者における心血管系疾患併発の要因(リスクファクター)であると考え、透析による遺伝子発現の変化を捉えることにより、生体への酸化ストレス負荷を評価することを試みた。まず、透析患者末梢白血球における遺伝子発現プロファイルの変化を、マイクロアレイ法を用いて網羅的に解析した。透析患者12症例と対照(健常人)7例について比較した結果、発現レベルが有意(P値<0.05)に2倍以上変化していた遺伝子は199あった。このうち、40遺伝子は患者群で上昇しており、残り159遺伝子は低下していた。発現が低下した遺伝子には、免疫グロブリンなどの免疫応答関連遺伝子が多く含まれていた。末梢白血球におけるこれらの遺伝子発現変化が酸化ストレスの影響を反映していることが示唆された。しかし、既知の酸化ストレス関連遺伝子群には明らかな変化が認められず、血液透析と酸化ストレス負荷の直接的な因果関係を検出することはできなかった。今後の課題として、症例数を増やしつつ、既知の酸化ストレス関連遺伝子に加えて、免疫応答関連遺伝子などの発現変化を酸化ストレスの指標として検討する必要がある。さらに、透析の影響により遺伝子発現に大規模な変化が生じることが示されたので、現在、数百例に及ぶ腎不全患者のサンプルを使用して、DNAメチル化などのエピジェネティクス変化の有無について検討を進めている。今後、酸化ストレスにより蓄積する8-OHdG(8-ハイドロキシ-2'-デオキシグアノシン)の細胞内濃度の測定も行い、遺伝子発現変化やエピジェネティクス変化と病態における酸化ストレスの影響および予後との関連を明らかにすることを目的に研究を進める予定である。
|
Research Products
(1 results)