2007 Fiscal Year Annual Research Report
物質文化から見る災害復興研究-インド西部地震にみるローカルとグローバルの接触過程
Project/Area Number |
06J40027
|
Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
舟川 美和 (金谷 美和) National Museum of Ethnology, 民族社会研究部, 特別研究員(RPD)
|
Keywords | 震災復興 / 染色 / インド / インド西部地震 / 物質文化 / 開発 / 水資源 / 過揚水 |
Research Abstract |
本研究の目的は、2001年のインド西部地震の被災地となり復興過程にある、インド、グジャラート州カッチ県において、物質文化に焦点をあてて、ローカルな状況を具体的に明らかにしながら、グローバルな援助アクターとローカルのせめぎあいを民族誌記述することである。 調査対象は、震災後の水質変化のために染色業者たちが新村に移住をすすめている染色産地のD村である。2007年11月には、舟川晋也(京都大学農学研究科・准教授)が水質調査、金谷が人類学調査を担当して現地調査を行い、以下のことを明らかにした。 (1)染色用水の利用の変化。1990年代初めまで水は、共有資源として共同利用されていたが、現在では水が私有され、水の利用権が売買されている。この変化は、震災前から生じており、おそらく飲料用水、農業用水の過揚水が原因であると考えられる。 (2)水質の変化は、震災前から生じており、その原因は過揚水である。過揚水により、年々管井戸を深く掘り下げる傾向があり、鉄分を含む地層にあたった管井戸の水は、天然染料による染色に適さないようになっている。 以上の2点からわかることは、水質の変化と染色業に与える影響は、震災前から生じている変化であること、染色業者たちは、必ずしも震災による被害とは言えない窮状を打開するために、復興援助を活用したということである。被災援助の目的にそぐわないように思える援助金の活用であるが、単に被災前に復旧するのではなく、将来を見据えた復興が可能になりつつあるのは、援助アクターに対する住民の働きかけがあったからである。この事例は、災害復興援助のあり方に一つの視座を提供してくれると考える。さらに、水質の変化や水利用方法の変化に対して、伝統的な天然染料による染色技術をどのように適応させているか、自然環境の変化に応じて移住を行いつつ、伝統的な生業を維持する方法を明らかにするためにも、本研究は意義があると考える。
|
Research Products
(5 results)