2007 Fiscal Year Annual Research Report
ルネサンス期のイタリア文学にみる女性観の変遷 『アーゾロの談論集』 を転換点として
Project/Area Number |
06J40048
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
仲谷 満寿美 Kyoto University, 文学研究科, 特別餅究員(RPD)
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Keywords | イタリア文学 / ルネサンス思想 / 西洋中世思想史 / ミソジニー / アルベルティ / フレゴーソ / カプレット(エド) / 女性史 |
Research Abstract |
本年度は15世紀イタリアのミソジニー文学のなかでも代表的な四作品の内容のあらましを検討した。レオン・バッティスタ・アルベルティ『デイーフィラ』『エカトンフィレア』(いずれも1430年ごろ執筆)では、女性は愚かで性悪で魔法を駆使するたちの悪い存在としで見下されている。バッティスタ・フレゴーソ『アンテロス』(初版1496年)は、性愛にかかわる男性の生理的反応についての解説に大きな紙幅を当てており、当時流行しつつあった恋愛論の類型からは少々逸脱しているが、恋する男性たちの奇妙なファッションやふしだらな詩歌や舞踏を非難し、愛は怪しからぬものであると断罪している。ペトルス・ハエドゥス(またはピエートロ・カプレット)『愛の諸種類について』(初版1492年)は、大学進学を目前に控えた甥が道を誤らないように心配して書かれたという設定の作品であるが、女性は心身ともにけがらわしい存在であることを繰り返し確認しながら、女性も、女好きのグループも、軟弱な文学も非難し、義母の邪な愛をはねつけたギリシア悲劇の主人公ヒッポリュトスのように恋を受け付けない者を男性の理想像として提案している。いずれの作品もベンボ『アーゾロの談論集』にたいして比喩や文学的表現の点で影響が認められるが、女性の魂の向上を認め女性にも文学の門戸を開いた『アーゾロの談論集』と、これら先行作品との懸隔は、研究開始当初に予測していたよりはるかに大きかった。ことに、過度の恋愛感情を黒胆汁の異常による一種の精神病とみなし、転地療養や去勢による治療を勧める『デイーフィラ』は、その文学的な体裁にもかかわらず、16世紀の恋愛指南書のたぐいとは大幅に異なっている。
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Research Products
(1 results)