2008 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝子ターゲティングによるイネゲノムへの任意の塩基置換変異の導入
Project/Area Number |
06J40089
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Research Institution | National Institute for Basic Biology |
Principal Investigator |
定塚 恵世 (久富 恵世) National Institute for Basic Biology, 分子遺伝学研究部門, 特別研究員(RPD)
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Keywords | 遺伝子ターゲティング / 相同組換え / 部位特異的組換え / 変異導入 / イネ / 形質転換 / マーカーフリー / 点変異 |
Research Abstract |
本研究の目的は、相同組換えによる遺伝子ターゲティングを用いて、イネの標的遺伝子の塩基を予めデザインした塩基に置換して、遺伝子の機能解析や発現制御を行うための「塩基置換法」を開発して、イネのゲノム配列を自由に改変することである。 本研究では遺伝子ターゲティングだけでなく、P1ファージのCre/lox系を用いた部位特異的組換えの技術に関しては、現在までに当該研究室では部位特異的組換え酵素Cre遺伝子を過剰発現させたイネのカルス及び植物体は、しばしば成育阻害が現れることが分かっている。そこで本課題では塩基置換用基本ベクターに組み込んだCre遺伝子は、その発現を制御できるよう、エストラジオールにて誘導できるよう工夫している。昨年度までに作成したベクターを用いて、エストラジオールによるCre遺伝子の誘導システムが有効に作用するための種々の条件を検討した。Cre遺伝子及びその発現誘導システムを有するブラスミッド(pXVE-Cre)を作成しマーカー遺伝子(ハイグロマイシン耐性遺伝子)が2つのlox配列で挟まれている構造を持ったトランスジェニックイネ(ターゲティングによりAdh2遺伝子領域内に点変異が導入されている)よりカルスを誘導して、pXVE-Creを導入した。ゲノム中にpXVE-Creをもったイネのカルスを選抜して、エストラジオール含有培地上でCre遺伝子の発現を誘導し、PCRによって2つのlox配列で挟まれているマーカー遺伝子が除去されたものを複数選抜することに成功した。さらに得られた部位特異的組換えが生じた個体の次世代を展開し、新たに導入したpXVE-CreのT-DNAも持たない完全なマーカーフリー個体を得た。この完全なマーカーフリー個体は、34bpのlox配列とターゲティングにより導入された点変異以外のゲノム構造は野生型と同等であると考えられ、相同組換えを介したターゲティングと部位特異的組換えを組み合わせて、目的の変異を任意の部位のみに導入することに成功した。これによりイネゲノムを自在に改変し点変異の様な小さな変異の導入や大規模な欠失を含むあらゆる変異を導入するための基盤技術となると期待される。従来までの、T-DNAやトランスポゾンの挿入による変異体作出、またはEMSなどの変異誘導剤による変異導入はいずれも偶然に期待して、大規模なスクリーニングを経て目的の変異体を作出・入手していたが、たとえ目的の遺伝子内に変異が導入されていても、複数のT-DNAがゲノム上に挿入していたり、また偶然に因っているために真に目的とした変異が得られる可能性は非常に低かった。しかしながら、本研究では遺伝子ターゲティングにより目的の変異をゲノム上の任意の部位に導入し、部位特異的組換えにより不要なマーカーを除去することで、真の目的通りの変異を得ることに成功した。
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Research Products
(5 results)