2008 Fiscal Year Annual Research Report
スパイン構造改変が海馬興奮性神経絡胞の恒常性、可塑性、および生存性へ及ぼす影響
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06J40091
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
山口 陽子 (白石 陽子) Nagasaki University, 大学院・医歯薬学総合研究科, RPD特別研究員
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Keywords | 海馬神経細胞 / 長期初代培養 / スパイン形態 / 発達 / 老化 / シナプス / Shc / Homer / Cupidin |
Research Abstract |
研究の目的は、興奮性神経細胞におけるスパインの存在意義を解明することであり、そのために、初代培養系海馬神経細胞のあらゆる発達段階におけるスパイン形態を人為的に操作し、その結果誘導される神経細胞の恒常性・可塑性・生存性の変化の解析を行う計画であった。近年、興奮性神経細胞のスパイン形態が成熟したものほど生理機能の亢進があるような解釈がなされているが、では実際、スパイン形態に異常を示す脳疾患における興奮性神経細胞に成熟スパインを人為的にレスキューし、生理機能の回復を図ることが可能であるのか、あるいは、スパインを幼若化させることにより老化神経細胞の若返りを図ることが可能であるのか、その治療的研究展開に至る可能性を探るために、培養神経細胞を用いたin vitroレベルの基礎研究を充実させていくことが、本課題の最終目標であった。これまでに得た研究成果のひとつとして、1年近く培養神経細胞を長期維持できるシステムの構築に成功し、神経細胞老化のプロセスが試験管内で再現されていること(in vitro aging)を実証できた点が挙げられる。このin vitro agingシステムの確立により、これまで困難であった神経細胞の外部環境操作が可能となったほか、単一細胞レベルさらには神経細胞スパインなど微小構造レベルにおける老化現象の観察が可能となった。実際、老若の培養神経細胞に興奮性刺激を与えた場合に誘導されるカルシウム応答の測定に成功し、また、シナプス関連因子の集積度の比較では有意な差が生じていることが示された。更に、神経細胞の疾患への脆弱性を評価するために行ったアミロイドベータの蓄積の比較では、試験管内老化神経細胞を疾患モデルとして使用できることが示唆された。 一方、スパイン形態の操作ツールとして使用するスパインモルフォジェンであるShcおよびHomer/Cupidinのスパイン形態制御メカニズムの解明に向けての研究では、リン酸化チロシンアダプターN-Shc/ShcCを介したスパイン形態制御に関わる細胞内シグナルカスケードを同定し、一方、Homerが活性化型Cdc42と結合する領域を絞り込み、その領域がスパイン成熟度やシナプス機能を修飾することを証明した。
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Research Products
(4 results)