2006 Fiscal Year Annual Research Report
都市近郊地域における水田地域の特性解明にもとづく生態系保全型営農方法に関する研究
Project/Area Number |
06J50302
|
Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
皆川 明子 東京農工大学, 連合農学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 水田 / 魚類 / 移動 / 落水 / 農薬散布 |
Research Abstract |
1.魚類の水田の利用実態の解明 2005・2006年に、多摩川中流域に位置する府中用水およびその受益水田(東京都国立市)を対象に、水田の水口・水尻にトラップを設置し、用排兼用型水路-未整備水田間の魚類の移動数調査を行った。その結果、落水時に最も多くの魚類が脱出すること、落水や農薬散布、降雨の有無によらず取水後20日から40日にかけて、ドジョウ、タモロコ、フナ属の稚魚(ヒレが完成する)が多数脱出した。よって、ヒレが完成して遊泳が活発になった個体が水田から脱出するものと考えられたが、水温や餌条件の変化などの脱出を促す主要な要因は課題として残された。また、水田からの脱出経路について見ると、ドジョウは水尻から、タモロコとフナ属は水口から圧倒的に多くの個体が脱出した。 2.水田内部での生物の生息に落水が与える影響 水田の落水時に水口と水尻にトラップを設置し、1時間ごとに水田から出てくる魚類の採捕と水田内部の水深の測定を行った。その結果、水田水深の低下に対し、タモロコやフナ属は早い段階で脱出するのに対してドジョウはもっと水深が低下してから脱出し始める傾向があり、その理由は、ドジョウはある程度乾燥に耐えることができるために、水深低下を危機と感じる度合いが他の魚種と比べて小さいためと考えられた。 農工大実習田に設けた5aの区画を5cm湛水し、ドジョウ・メダカ各500個体、フナ属150個体を区画に均等に放流した後、1時間ごとに脱出してくる魚類の確認と区画の水深測定を行った。その結果、魚種によって脱出率が異なり、メダカは90%以上が脱出したのに対してドジョウは7.2%、フナ属は14.2%となり、水田に多くの魚類が取り残される可能性が示唆された。水田水域の魚類個体群の衰退が進んでいる場合には、個体の供給源としての水田の役割が重要となることから、水田内の魚類が水路へと脱出できる技術(水管理方法など)の必要性が認められた。 3.水田における生物の生息に考慮した水田の構造および営農方法(落水、農薬散布)の提案 流れに向かって湖上する性質が強い遊泳魚にとって、用水路系への脱出が容易であることから、用水路系の存在が魚類の水田における繁殖と分散に寄与していることが示された。よって、圃場整備事業において用排兼用型の潅漑システムを保全する区域を設けること、排水路堰上げ式水田魚道(端、2005)の採用を提案した。また、水田水域の魚類の保全に資する営農方法として、多くの当歳魚が水田から脱出する取水後40日まで農薬散布(特に殺虫剤)を差し控えること、農薬散布前に水深1cm程度まで落水して魚類を水田から脱出させた後に農薬散布を行うことを提案した。
|
Research Products
(2 results)