2007 Fiscal Year Annual Research Report
磁場勾配NMR法による人工バリア材中の水分子及び金属イオンの拡散挙動に関する研究
Project/Area Number |
06J52392
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
高橋 貴文 Tokyo Institute of Technology, 原子炉工学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 拡散 / 磁場勾配NMR / 分子動力学 / Cs / 構造破壊 / アルカリ変質 / モンモリロナイト / 水分子 |
Research Abstract |
Csイオン(Cs^+)は、人工バリア材への吸着状態が他の核種と異なるとされ、また、地下水への溶解度も高いことから地層処分の安全評価において重要な核種である。また、人工バリア材中の核種の移行評価を行う上では、対象とする核種の拡散メカニズムを適切に理解することが必要である。そこで、Cs^+の拡散メカニズムについて検討するため、昨年度開発した^<133>Cs用NMRプローブを用いて、塩化セシウム水溶液中のCs^+の拡散係数及び水分子の拡散係数を測定した。その結果、Cs^+の拡散速度は、溶質濃度が増大するにつれて低下することが見出された。一方、水分子の拡散速度は溶質濃度に対し極大値を示し、1.0molkg^<-1>において最速であることが明らかとなった。これらの結果は、構造破壊型イオンの性質を反映したもので、過去の成果とも定性的には一致した。しかしながら、CsCl水溶液中の水分子の拡散については、過去の研究では純水申にくらべ20%程度加速されると報告されているものの、本研究では最大でも5%に過ぎないことが明らかとなった。水分子の拡散速度についてさらに検証するため、分子動力学(MD)シミュレーションによる水分子の拡散係数の評価を行った。その結果、水分子の拡散速度は、最大でも数パーセント促進されるに過ぎないことが判明し、磁場勾配NMR法により得られた拡散係数の変化とよく一致した。 また、人工バリア材の性能評価においては、主要構成鉱物である粘土鉱物・モンモリロナイトがセメントから流出する高アルカリ水溶液により変質した後も核種の移行を遅延させる能力を保持できるか否かが課題である。そこで、アルカリ変質作用がモンモリロナイトの性能に与える影響について、水分子の拡散係数の測定より検証した。その結果、変質モンモリロナイト試料中の水分子の拡散速度は、未変質試料中に比べ15%程度大きいことが明らかとなった。さらに、T_2緩和時間の分布を測定した結果、モンモリロナイト表面の水分子の拘束状態がアルカリ変質によって変化していることが見出された。これらの結果より、人工バリア材の核種移行抑制能力が、アルカリ変質によって次第に低下することが示唆された。
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Research Products
(3 results)