2006 Fiscal Year Annual Research Report
貸出市場における資源配分と企業の進化に関する実証分析
Project/Area Number |
06J52442
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
坂井 功治 一橋大学, 経済学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 企業規模分布 / 対数正規分布 / 企業年齢 / 資金制約 |
Research Abstract |
坂井功治「企業規模分布の時間進化と資金制約」『日本経済研究』第57号掲載予定、2007年. 本論文は、金融市場の不完全性に起因する資金制約が企業規模分布の年齢に伴うダイナミクスに与える影響について検証を行ったものである。企業規模分布は企業の存続・退出や成長といった過去の様々なショックが累積したものであり、企業の実体面のダイナミクスにおいて非常に重要な示唆を有している。Cabral and Mata(2003)は、企業規模分布が企業の年齢の低いときには右へ歪み、時間とともに対数正規分布へと収束していく事実を示し、このダイナミクスが金融市場の不完全性に起因する資金制約によって生じていることを実証的に明らかにした。 本論文は、Cabral and Mata(2003)の示唆にもとづき、彼らの分析におけるサンプルセレクションバイアスの問題や検証に際する恣意的な仮定の問題などを考慮し、全年齢の企業をサンプル対象としたうえで、年齢別、業種別に、企業規模分布と資金制約の関係を最尤法によって推定するという手法をとった。 本論文の主な結果は以下の4点である。第一に、大企業の企業規模分布は対数正規分布に従うものの、中小企業の規模分布は対数正規分布から大きく乖離しており、右への歪みをもつ。第二に、企業規模分布は企業の年齢の低いときには右へ歪むものの、年齢とともに対数正規分布へと収束していく。第三に、企業規模分布のダイナミクスにおいて、企業の退出による淘汰効果は非常に小さい。第四に、企業規模分布は資金制約が強いほど右へ歪み、企業規模分布のダイナミクスにおいて資金制約が非常に重要な役割を果たしている。以上の結果は、Cabral and Mata(2003)の実証結果と整合的なものであり、企業の実体面のショックの累積である企業規模分布のダイナミクスにおいて、金融市場の不完全性に起因する資金制約が非常に重要な役割を果たしていることが明らかとなった。
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Research Products
(2 results)