2007 Fiscal Year Annual Research Report
貧困層による市場を通じた土地へのアクセス拡大のための条件の解明:ウガンダの事例
Project/Area Number |
06J52462
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Research Institution | National Graduate Institute for Policy Studies |
Principal Investigator |
相川 明子 National Graduate Institute for Policy Studies, 政策研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 貧困 / 土地市場 / アフリカ / ウガンダ |
Research Abstract |
本研究の目的は、ウガンダ共和国の事例研究を通じて、どのような取引相手・契約方法が貧困層による市場参加と土地へのアクセス拡大を可能とさせているのか、を明らかにすることを目指した。 まず、既存データと昨年度本調査の分析により、以下のことが明らかになった。 1.従来土地の売り手と買い手と証人の三者が署名する非公式な覚書に比べ、その三者間で取り交わす覚書にさらに村レベルの行政委員会が裏書をするケースが近年増加傾向にあることが確認された。 2.1.の増加傾向は民族や土着の慣習法が未だ強く影響を及ぼし共同体的な営みを行っていると考えられている地域により顕著に現れていた。これは、既存文献において見られる、口頭のみの契約や非公式な覚書のみの契約は本来契約不履行のリスクが高いと思われるため、通常この低い履行力を共同体的な地縁・血縁・慣習をもって補完できるような地域により多く見られるとの仮定と食い違うものである。 更に本年度のフォローアップ調査により以下が確認された。 3.共同体的関係の強い地域においては、証人の数が圧倒的に多く、村長は地元名士の一人として相対的に位置づけられ、村長に支払う手数料は他の証人とあまり変わらない場合が多い。他方で、血縁・地縁関係が比較的薄いと思われる地域や家計では、周囲も認めるリーダーは村長のみであるため、他の証人とは別の手数料を一定額支払って行政のお墨付きを得る傾向が認められた。 共同体的な関係の薄い地域や家計において、取引の当事者が対価を払って行政の承認を得ようとする自発的行動は、行政や司法制度の脆弱なアフリカにおける土地権利の保障と地方分権に重要な示唆を与えると思われる。しかし、(3)の後者(地縁・血縁関係の薄い地域)の場合、村行政に裏書を頼む際の費用が嵩むため、負担能力のない貧困層は完全に非公式な契約方法に頼らざるを得ない可能性があることには注意を払うべきと考える。
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Research Products
(1 results)