Research Abstract |
繊維配向した柱状構造を有する多結晶ナノ銅薄膜を対象に,分子動力学法を用い単軸引張シミュレーションを実施し,変形・破壊挙動に及ぼす結晶粒径および繊維配向の影響について定量的評価を行った.多結晶ナノ銅薄膜は,平面をVoronoi分割法によって領域分割し,厚さ方向に伸張させることで柱状構造を有すモデルとして構築した.Voronoi粒子に,繊維配向軸として<100>,<110>,および<111>,また,比較として無配向モデルを構築した. まず,<110>繊維配向を有する薄膜の変形挙動の検討を行った.マクロな変形挙動である応力-ひずみ関係において,ひずみの負荷によって平均応力が増加し,結晶粒界より部分転位が放出され,それに連なる積層欠陥の形成により非線形性が顕著になった.更なるひずみの負荷により,粒界よりき裂が生じ平均応力が急激に減少することを示した.また,結晶粒径の減少に伴い剛性が低下することを明らかにした.さらに,0.2%耐力は,結晶粒径が15nmよりも大きければ,Hall-Petchの関係に従い,結晶粒径の減少とともに耐力が増加したが,それよりも小さくなると,結晶粒径の減少とともに耐力は減少し逆Hall-Petchの関係が生じることを示した.また,結晶粒径の減少により,結晶粒の変形抵抗および格子ひずみに対する弾性定数が増加した.これらの特異な挙動は,結晶粒径の減少に伴い,単位体積あたりに占める結晶粒界の割合が増加するため,マクロな変形挙動において結晶粒界の変形挙動が支配的になるためであると考えられる.また,異なる繊維配向を有する多結晶モデルにおいて,0.5%耐力は系のSchmid因子の平均値の増加とともに減少して<110>配向,<111>配向,<100>配向の順に最大応力が小さくなることを明らかにした.
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