2006 Fiscal Year Annual Research Report
酸化物中の水素同位体の挙動(高プロトン伝導体の創製に向けて)
Project/Area Number |
06J52593
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
伊藤 剛 名古屋大学, 大学院工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 酸化物水素イオン伝導体 / 中性子回折 / 最大エントロピー法 |
Research Abstract |
水素イオン伝導性酸化物を実用化するには、今までにない高水素イオン伝導性酸化物を創製する必要がある。そのためには、試料中の水素イオンの伝導経路を明らかにし、その知見を基に材料設計をする必要があるが、現在までに水素イオンの伝導経路を実験的に明らかにした例は無い。それどころか、伝導経路を明らかにするために基本的な情報である酸化物中の水素イオンの存在位置すら明らかになっていない。そこで、本研究では試料に重水を溶解させたBaM_<0.5>In_<0.5>O_<2.75>(M=Sn, Zr)を試料に選択し、温度10-473Kで中性子回折測定を行い、測定結果を今までにこれ等の物質に適用されたことのない最大エントロピー法を用いて解析することで試料中の水素イオンの存在位置及び存在位置の温度による変化を明らかにすることを目的とした。解析の結果、試料中の水素イオンは試料中の水素イオンは空間群Pm3^^-mの特殊位置である12hサイトに非常に近い48nサイト近傍に存在し、O-D距離は1.0Åであった。水素イオンの存在位置は、同一の結晶構造を持つ試料BaM_<0.5>IN_<0.5>O_<2.75>(M=Sn, Zr)で一致した。O-D結合距離は赤外吸収スペクトルから予測される結合距離に一致した。中性子回折から得られた試料中の水素イオンの存在位置は、過去に報告されたコンピュータシミュレーションの結果に一致した。本研究によって、実験的に初めて水素イオン伝導性酸化物中の水素イオンの存在位置を正確に求めることに成功した。同一の試料を用いて、中性子回折測定を温度77K、室温、473Kで行い、その結果を同様の手法で解析した。その結果、10-473Kの温度範囲で試料中の水素イオンの存在位置は変化しなかった。しかしながら、水素イオンの存在領域は温度の上昇と共に変化した。この原因としては、温度の上昇と共に異方的な熱振動が増加したためだと考えられる。
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Research Products
(3 results)