2007 Fiscal Year Annual Research Report
アンケート調査と神経経済学の手法による人間の行動や幸福感に影響を与える要因分析
Project/Area Number |
06J52772
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
木成 勇介 Osaka University, 経済学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 時間割引率 / 神経経済学 / f-MRI / 危険回避度 / 危険資産保有比率 |
Research Abstract |
本年度は、前年度に引き続き、人々の時間割引の特徴について研究した。先行研究において、人は遠い将来の報酬に関して意思決定を行う時には忍耐強い決定をするのに対して、近い将来の報酬に関する意思決定を行う時にはせっかちな意思決定を行うことが報告されており、この現象は逓減的時間割引率と呼ばれている。これらの時間割引率の脳内メカニズムを探るため、大阪大学の学生や職員を対象にf-MRI内で先の実験と同様の異時点間の意思決定に関する実験を行った。神経経済学の先行研究では、遠い将来に関する意思決定を行っている時と近い将来に関する意思決定を行っている時とでは、脳の異なる領域が働いていることが報告されている。しかし、今回の実験からはこのような単純な2分法は観察されておらず、時間割引の脳内メカニズムは非常に複雑であるという結果が得られた。また、時間割引率の研究と並行して、時間割引率と並んで、人間の行動を記述する重要なパラメータと考えられている危険回避度についても研究を行った。危険回避度とは、リスクのある事象を嫌う程度である。大阪大学が行っているアンケート調査「暮らしの好みと満足度」を利用し、日本人と米国人の危険回避度を計測したところ、危険回避度に両国で統計的に有意な差は無いことがわかった。このアンケートでは、危険回避度を計測する質問に加え、危険資産をどれぐらい保有しているかについても尋ねられており、それによると、日本人は米国人と比較して危険資産保有量が少ないことがわかっている。したがって、これらの結果は、日本人が米国人と比較して危険資産をあまり保有しないことの原因が、リスクに対する態度の違いでは説明できないことを意味しており、興味深い結果である。この研究成果は2007年9月に行われた日本金融学会秋季大会(於同志社大学)にて報告済みである。
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Research Products
(2 results)