2006 Fiscal Year Annual Research Report
「地域社会における相談サービスの需要と供給システムー司法過疎地における滞在型調査」
Project/Area Number |
06J52812
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
吉岡 すずか 神戸大学, 法学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 弁護士利用 / 相談 / 司法過疎 / 島嶼 / 法的サービス / エスノグラフィー / フィールドワーク / 互助行為 |
Research Abstract |
本研究計画は、主に都市部において実態が研究されてきた弁護士や司法書士などの法律家と島嶼部、農村などの非都市部に代表される小規模地域社会との関係を法的サービスの供給や需要ニーズから探ることにある。平成18年度は、平成15年より継続実施してきたフィールドワークにもとづく経験的資料(於:沖縄県石垣市)を考察の材料とし、弁護士利用において観察されたあるパターンに着目し分析をすすめた。調査地において「知り合いの(地元出身で)別の場所にいる弁護士」が多く利用されるというパターン生成を解明することは、人々が法的助言および法的サービスをどのように探索し獲得するのかについてひとつの説明になると考えられる。そこで、地域社会の背景にある諸要因について文化的、社会的、経済的要因から検討をおこない、以下のような仮説を設定した。第一に、私的なつながり、とりわけ地縁、血縁のネットワークを重視する地域性がパターン生成に影響を与えていると考えられるが、同郷的結合といわれる「郷友会」の実態から説明可能ではないか。この点について、調査地と弁護士の供給元地域における郷友会の実態や背景について、数度にわたる文献調査(国会図源館における郷土誌、地方新聞の悉皆調査)を実施した。第二に、調査地のような伝統的地域社会にみられる互助慣行の存在である。ユイに代表されるような互助行為は調査地のような島嶼社会に特有なものということもできる。第三に、島嶼性がサービスの供給、購買にもたらす複合的要因、とりわけ生活圏域と購買、消費行動がパターン生成の一要因となりうるのではないか。考えられる論点は、島民がどれほどの頻度で島外、本土あるいは本島主要部市へ高次のサービスや買回り品購入のために転出するものか。また、法的サービスの購入や利用が高次のサービス・財の購入とどれほど差別されるものであるか等であり、仔細な分析は次年度の課題である。
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