2006 Fiscal Year Annual Research Report
高精度リチウム同位体分析によるマントル化学的不均質性の解明
Project/Area Number |
06J52842
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
渡邊 昌樹 岡山大学, 大学院自然科学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | リチウム同位体 / マントルプロセス / かんらん岩体 |
Research Abstract |
本研究は、上部マントル構成鉱物中に微量(2μg/g)に含まれるリチウムの同位体比を地球化学トレーサーとして用いることで、マントル中の化学的不均質構造の成因を解明することを目的としている。そのために本研究は二つのアプローチにより進められてきた。一つは、高温高圧実験によるマントル中でのリチウム同位体の挙動を決定する。また一つは、二次イオン質量分析を用いて、天然試料中のリチウム同位体比を高空間解像度で記載する。今年度の研究計画は、1.かんらん石・流体間でリチウム同位体の分別係数を高温高圧実験により決定 2.幌満かんらん岩体から採取されたマントル物質中のかんらん石・単斜輝石の主成分元素組成・リチウム含有量およびその同位体比の分析を行うことであった。 1.高温高圧実験から得られた結果を以下にまとめる。単純系で行われた先行研究と比較して、天然試料を用いて行った本研究の実験結果から、リチウム同位体は高温高圧下で3%以上の、非常に大きな同位体分別が起こることがわかった。この同位体分別の程度は、900〜1200℃の条件下で有意な温度依存性は確認できなかった。単純系で行われた過去の研究に対して、本研究の結果は、リチウムの同位体分別に組成依存性が存在する可能性を示し、これを解明することで広く天然に対して応用できる。そこで、実験条件を変えて高温高圧実験を継続し、リチウム同位体分別の組成依存性を明らかにする。 2.かんらん石・単斜輝石の化学分析は継続中である。現在までの岩石記載・化学分析結果から、幌満かんらん岩体に産するダナイト中のかんらん石には緑色タイプと黒色タイプのものに分けられ、それぞれのリチウム含有量及び同位体組成に有意な違いが見られた。これは、先行研究で解釈された結晶分別作用によるダナイトの成因モデルでは説明できない。本研究では引き続き化学分析を進めることで、その成因を解明する。
|