2007 Fiscal Year Annual Research Report
高精度リチウム同位体分析によるマントル化学的不均質性の解明
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06J52842
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
渡邊 昌樹 Okayama University, 地球物質科学研究センター, 特別研究員(DC2)
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Keywords | リチウム同位体 / マントル |
Research Abstract |
本研究は、Li同位体を地球化学トレーサーとして用いることで、マントルの化学的不均質構造の成因を解明することを目的とする。これまで再現実験と天然試料の観察に基づいて研究を進めてきた。現在まで、高温高圧下でのかんらん石と流体間のLi同位体の平衡下での分別はほとんど起こらないと仮定されてきた。しかし自身のこれまでの天然のマントル物質の観察から、拡散による同位体分別のみでは説明できない結果を得た。そこで本研究は、1)Liの平衡同位体分別係数を再現実験により決定し、2)マントル物質のLi存在度および同位体組成の詳細な観察を行なった。以下に得られた結果をまとめる。 1.再現実験は、900〜1200℃、1GPaの温度圧力条件下で、天然の蛇紋石にMgOを加えた混合物、あるいよ合成したかんらん石に水を加えた混合物の2種類の出発物質を用いて行なった。結果は、出発物質によらず、かんらん石-流体間で1%以上のLiの同位体分別が起こることがわかった。この結果は、自身のこれまでの観察事実ともよく一致する。 2.幌満かんらん岩体に産するレールゾライト、ハルツバージャイト、ダナイトを構成するかんらん石中のLi存在度および同位体組成の分析を行った。結果は、レールゾライトの中でほとんど一定のLi同位体組成であったのに対して、ハルツバージャイト、ダナイトの中で幅広いLi存在度および同位体組成の変化がみられた。1/[Li]vs.δ^7Li図にプロットすると、レールゾライトを中心として二つのトレンドがみられた。ひとつは1/[Li]は一定で低いδ^7Li方向へ、他方は高い1/[Li]およびδ^7Li方向へのトレンドであった。前者のトレンドはかんらん石と流体間の平衡下での同位体分別により、後者のトレンドは高いδ^7Liを特徴とする起源物質から結晶分別したかんらん石の付加により生じたと考えられる。
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Research Products
(1 results)