2007 Fiscal Year Annual Research Report
椎間板変性および変形性関節症におけるIX型コラーゲンTrp多型の役割
Project/Area Number |
06J52882
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
油形 公則 The University of Tokushima, 大学院・医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 腰椎椎間板変性 / 遺伝子多型 / IX型コラーゲン / MRI / トリプトファン / 軟骨 |
Research Abstract |
IX型コラーゲンは、軟骨組織の主成分であるII型コラーゲンの表面に特定のアミノ酸間でクロスリンクすることにより、軟骨マトリックスの恒常性維持に重要な働きをしていると考えられる。IX型コラーゲンの遺伝子多型(本稿ではTrp多型と記載する)は、コラーゲンには通常存在しないトリプトファンが導入されるミスセンス変異である。本研究の目的はIX型コラーゲンのTrp多型が軟骨の変性に果たす役割を調べることにある。 日本人84例の腰椎椎間板ヘルニアの手術患者を対象にして、血液採取を行い、まずTrp多型の有無と頻度を調べた。するとTrp2多型(col9a2遺伝子に存在する)は18例(21.4%)、Trp3多型(col9a3遺伝子に存在する)は0例であり、これは先に調べた健常日本人124名の検討(Trp2多型26名(21%)、Trp3多型0名(0%))とほぼ同率であり、日本人ではTrp2多型のあることと、手術が必要な臨床症状を有する椎間板疾患の罹患しやすさとは関連のないことがわかった。 そこでその他の腰椎椎間板変性に関するパラメーター(MRI所見(Schneidermann分類を用いた変性度)、年齢、Body Mass Index(BMI)、重労働や喫煙歴の有無などとの相関関係を調べた。するとTrp2多型は40歳未満においてMRI上の椎間板変性スコアと有意の相関があった。これはTrp2多型が若年発症の腰椎椎間板ヘルニア症例においてより重度の椎間板変性に関与していること、すなわち若年において重症化の増悪因子として働いている可能性のあることが示唆された(Higashino, et. al. Int Orthop.2007;31(1):107-11)。現在、この84例の腰椎手術で採取した摘出椎間板組織を用いてII型、IX型、XI型コラーゲンを分離精製し、ウェスタンブロットによる解析を行っている最中である。現時点では、コントロール(切断肢から採取)の関節軟骨組織と比較して、変性椎間板組織から精製されるIX型コラーゲンはきわめて微量であることがわかった。このことは変性を起こした椎間板組織では早期に分解を受けていることを示唆している。また同時に変形性膝関節症症例の変性関節軟骨組織も解析を行ったが、IX型コラーゲンの精製が困難なため結果を得ることができなかった。
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Research Products
(12 results)