2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06J52902
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
藤見 恒平 九州大学, 大学院医学研究院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 疫学的調査 / 臨床病理 / 認知症 / 脳 |
Research Abstract |
現在、九州大学医学研究院神経病理学では、久山町研究における認知症疾患の臨床病理学的検討とデータベース化、また、それに基づく認知症性疾患の病態に関する検討を行っている。 久山町研究は、久山町(人口約7000人)の40歳以上の住民を対象とし、1961年より今日まで継続している心血管病の疫学調査である。特徴として、追跡率が99%を超え、さらに対象者の死因を原則として病理解剖にて詳細に検討していることにある(通算剖検率81%)。また、久山町は日本の平均的な人口構成、出生率、死亡率、職業構成を示している。そのため、久山町研究症例の剖検脳を検討することにより、日本での一般集団内での分布を検討することが可能と考えられる。現在、このデータベースを用いて、各認知症病型の有病率や危険因子の検討等、様々な研究が進行中であるが、特に今年度の成果としては、以下が挙げられる。 (1)剖検脳海馬におけるCOX2発現の検討 COX2は非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)の作用ターゲットと知られており、各種疫学的な調査からNSAIDがアルツハイマー病(AD)の発症抑制作用を有する可能性が指摘され、AD脳とCOX2の関連について検討が重ねられてきたが、統一した見解を得るには至っていない。そこで今回は、AD脳の検討にて多くの場合対照群として用いられる非認知症者の剖検脳海馬におけるCOX2発現の検討を行った。その結果、非認知症例の海馬ではCA1領域ではCOX2発現が弱いのに対し、CA3領域、海馬台領域、嗅内野領域では発現が強く、また、加齢により発現が増強されることが免疫組織学的に確認された。また、非認知症群ではAD型の病理変化を伴っていてもAD群と比しCOX2発現は弱かった。この結果は、第47回日本神経病理学会で報告し、その後論文投稿を行いacceptされた。 (2)レビー小体型認知症(DLB)の再検討 1996年に最初のDLB診断基準が策定(Neurology 1996;47:1113-1124)されて以来、様々な臨床病理学的検討が重ねられてきた。その結果、最初の診断基準では、病理学的DLBが臨床的DLBを大きく上回ることが問題となり、2005年に診断基準の改定(Neurology 2005;65:1863-1872)が行われた。しかしこの改訂版のDLB診断基準を用いた臨床病理学的検討は、現在に至るまでほぼ皆無である。そこで、我々のデータベースを用いてDLBの再検討を行った。その結果について現在検討を行い、論文投稿予定である。
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Research Products
(2 results)