2007 Fiscal Year Annual Research Report
ヘリコバクター・ピロリが産生するVacA毒素の毒性発現機構の解析
Project/Area Number |
06J52962
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
久恒 順三 Nagasaki University, 大学院・医歯薬学総合研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ヘリコバクター・ピロリ / VacA / マクロファージ / p38MAPK / ATF-2転写因子 / NF-κB / 細胞内Ca^<2+>濃度 / IL-8 |
Research Abstract |
H. pyloriが産生する空胞化毒素(VacA)によってシグナル伝達系p38 MAPKと転写因子ATF-2が活性化され、炎症反応に関わる誘導型シクロオキシゲナーゼ-2の発現亢進を介して、プロスタグランジンE_2の産生誘導を促す事を明らかにし、平成18年度の成果は、国際誌「Hisatsune, et. al.,Infection and Immunity, 75(9),4472-4481, 2007」に報告した。 一方、ピロリ菌感染局所に認められる炎症性細胞の浸潤や活性化には種々のサイトカインが関与していることが知られている。その中で、特に、IL-8は多核白血球の強力な誘導活性化因子であり、胃炎の進展と多核白血球の浸潤が相関する事実は、胃粘膜障害にIL-8が重要な役割を担っている事を示唆している。そこで、今年度は、VacAによる宿主細胞からのIL-8産生の可能性とその産生機構の詳細を究明した。各種培養細胞において、VacAによるIL-8の産生能を調べた結果、monocyte U937細胞を含む数種の細胞でIL-8の産生が顕著に亢進した。本菌感染病巣において、マクロファージの浸潤が多く認められる事から、U937細胞において、VacAによるIL-8産生機構を詳細に検討した。その結果、VacAは、MAPKの活性化を介して、転写因子であるATF-2及びCREBを活性化し、IL-8 promoter領域のAP-1 siteへの結合を促した。また、VacAは、細胞内のCa^<2+>濃度を上昇させ、NF-κBを活性化し、同様にNF-κB siteへの結合を促進させてIL-8の発現を誘導させる事が判明した。この研究結果を国際誌「Hisatsune et al., Journal of Immunology, 180(1), (in press)」に報告し、本年4月号に掲載予定である。
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