2007 Fiscal Year Annual Research Report
幹細胞医学による機能的神経再生の実現に向けた、シナブス形成過程の解明
Project/Area Number |
06J53053
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
石田 綾 (伊藤 綾) Keio University, 医学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | シナプス / 小脳 / プルキンエ細胞 / Cbln1 / マウス |
Research Abstract |
平成18年度から引き続き、Cbln1分子の機能の解明を目的に研究を行った。HEK293細胞の培養液から調整したCbln1溶液を、In vitroおよびIn vivoにおいて、小脳プルキンエ細胞のシナプスに作用させ、その効果を、電気生理学、構造学的解析と、行動レベルの解析により観察した。まず、In vitroにおいては、小脳培養細胞または急性切片に作用させた場合、プルキンエ細胞にシナプス前部の形成が、興奮性特異的に誘導されることを示した。この効果はCbln1の作用後6-8時間で見られ、従来報告されている大脳皮質や海馬でのシナプス形成と比較し、非常に早い時間経過で起こることを見出した。さらにIn vivoにおいて、Cbln1濃縮溶液を成体cbln1-/-マウス(P42-54)の硬膜下に投与すると、平行線維-Purkinje細胞シナプスの形成が強力に誘導され、2日間で正常なシナプスの密度が95%と野生種のレベルにまで増加すること示した(北大、渡辺研との共同研究)。行動レベルでも、小脳失調がシナプスの構造的変化に伴い劇的に回復したが、効果は一過性であった。投与したCbln1の減少とともにシナプスの数は減少し、投与後14日目から再び小脳失調を示し、3週間後にはもはや効果は見られなくなった。 本研究成果から、Cbln1は成体小脳で強力なシナプス誘導作用を持ち、シナプスの維持にも必須であることが解明された。成熟後の中枢神経系において、このように著しいシナプスの構造的変化をおこす分子は、いままでに報告がない。Cbln1は、小脳以外の脳部位にも発現しており、脳全般で同様な作用を持つ可能性がある。
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Research Products
(2 results)