2006 Fiscal Year Annual Research Report
国際刑事裁判制度を中心とした平和的紛争解決および平和構築に関する研究
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06J53112
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Research Institution | International Christian University |
Principal Investigator |
小松崎 利明 国際基督教大学, 行政学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 国際刑事裁判 / 真実和解委員会 / 紛争解決 / 平和構築 |
Research Abstract |
今年度は、主に研究課題に関連する資料の収集と議論を整理する作業を行った。 冷戦終結後の国際関係においては、ハイブリッド裁判所方式を含めた国際的な刑事裁判制度を通じて個人の刑事責任を追及し、平和を達成しようという動きが見られる。ところが、紛争後社会における住民間の和解に基づいた平和構築という課題とって、国際的な刑事裁判制度がどこまで有効に機能するのかという問題も指摘されている。すなわち、いわゆる正規の国際刑事司法制度における厳格な法の適用による正義の追求が、必ずしも紛争後地域の住民間の和解達成に貢献していないことが明らかとなってきているのである。 他方、地域の伝統的な紛争解決手段や慣行を考慮に入れて法を柔軟に運用する真実和解委員会などの《準司法制度》による平和構築の試みが世界各地で行われ、一定の成果を挙げている。そこでは、同制度が戦争犯罪等の加害者とその被害者を含めた住民間の和解と共生に寄与する事例も見られ、さらにそれが刑事裁判制度を補完する機能を担う可能性も指摘されている。 こうしたことを背景に、紛争後の平和構築という観点からは、刑事裁判制度と準司法制度の和解推進機能の有機的連関を軸とした国際関係の司法制度化(judicialisation)が求められていると言える。とりわけ、地域に固有の紛争解決・平和構築手段を含めた包括的な国際刑事裁判概念の構築が必要であり、それによって紛争解決・平和構築の有効な手段として国際法を位置づけることが可能となる。 次年度は、現地調査を含めた研究成果をもとに博士論文の執筆に取り組む予定である。なお、今年度の研究成果の一部は、2006年6月16-18日に米国ワシントン州立大学で行われたAsian Studies on the Pacific Coast年次研究大会にて発表した(改訂の上、雑誌論文として発表予定)。
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