2007 Fiscal Year Annual Research Report
国際刑事裁判制度を中心とした平和的紛争解決および平和構築に関する研究
Project/Area Number |
06J53112
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Research Institution | International Christian University |
Principal Investigator |
小松崎 利明 International Christian University, 行政学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 国際刑事裁判 / 真実和解委員会 / 紛争解決 / 平和構築 |
Research Abstract |
今年度は、国際刑事裁判制度を中心とした平和的紛争解決および平和構築の実行、とりわけ真実和解委員会の実行に焦点を当てて研究・調査を行った。国際刑事裁判所や旧ユーゴおよびルワンダの国際刑事裁判所などにおける刑事司法過程については多くの研究がなされており、国際法学におけるその意義が指摘されている。また真実和解委員会についても平和的紛争解決および平和構築におけるその役割の重要性が近年指摘され、国際政治学や平和研究の観点からの事例研究が行われている。他方、こうした国際的な刑事司法制度や《準司法制度》と位置づけられるている真実和解委員会の多様な実行を包括的に国際法学のなかに位置づけることは、これまで十分になされてきたとは言い難い。この問題を考えるにあたって、例えば2001年に設立された東チモールの真実委員会(CAVR)の実行が参考になる。この委員会では、通常の刑事裁判と委員会との有機的連関が制度的に整備されている。すなわち、いわゆる「重大な犯罪」に関しては「重大犯罪パネル」において訴追・裁判が行われ、他方、略奪や軽微な暴行など重大性の低い犯罪については委員会が取り扱うが、委員会が重大な犯罪の情報を得た場合にはそれを検察局に通知し、検察局が調査・訴追することが求めらているのである。この場合訴追を危惧して申告を踏みとどまる加害者が出ることが予想されるが、この委員会の実行を見る限り4年間で1500を超える加害者からの申告・供述が得られており、その中から検察局および重大犯罪パネルとの制度的連携が図られていることが明らかとなった。ただし、こうした事例が住民間の和解という長期的な平和構築にどの程度影響を与えるか、またモデルとしてどの程度普遍的性質をもつものなのか、そしてこれらをふまえて修復的司法や移行的司法を国際法体系の中でどう位置づけらるのかについては、今後の研究の課題である。
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