2006 Fiscal Year Annual Research Report
強酸性ストレスに対する植物の応答機構の生理・生化学的および分子生物学的解析
Project/Area Number |
06J53181
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
加島 洋亨 日本大学, 生物資源科学部, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ストレス耐性 / 強酸性耐性 / ケナフ / 根圏域の中和作用 / アンモニア分泌 / フェニルアラニン / PAL / 根の生理活性 |
Research Abstract |
これまでの研究によりケナフ(Hibiseus cannabinus)やソバ(Fagopyrum eseulelltum)などの強酸性に対し比較的強い植物は、強酸性条件下において根からアンモニアを分泌することで根圏域を中和するという知見を明らかにした。本年度の研究では、その分泌機構に関する生理学的および分子生物学的な解析を進めるとともに、この現象の植物間における普遍性についての検証を行った。 まずケナフを用いて、分泌されるアンモニアのSourceの一つとしてアミノ酸を想定し、強酸性条件下(pH3.0)で栽培した根のアミノ酸を測定した。その結果、強酸性処理にともないaspartic acid(Asp)やphenylalanine(Phe)が増加することを確認した。さらに、強酸性処理をした直後に根のアンモニア含有率が高まり、それにともない水耕液中にアンモニアが分泌された。そこで、最も増加していたPheに着目して、Pheからアンモニアを生成するPhenylalanine ammonia-lyase(PAL)の活性とアンモニア分泌との関係について検討した。その結果、強酸性処理すると短時間で根のPAL活性が高まるとともに、アンモニア分泌量も増加した。また、根のPAL合成遺伝子の発現をRT-PCRで確認したところ、強酸性処理により根のPAL合成遺伝子の発現が顕著に高まっていた。このことより、分泌されるアンモニアは、根においてPheをSourceとして、PALによって産生されて分泌されていることが明らかになった。 また、この現象が植物に普遍的な現象であるかを検討するために、十数種類の植物にっいて酸性処理によるアンモニアの分泌量を比較したところ、量的には異なるがすべての植物でアンモニアの分泌が確認されたことから、このアンモニア現象は植物に普遍的なものであると言えよう。さらに、酸性条件下における植物根の生理活性の指標として根のTTC還元活性を測定し、アンモニア分泌量との関係について検討したところ、その活性とアンモニア分泌量との間には正の相関が確認された。このことから、植物の強酸性耐性の一つがアンモニアの分泌による根圏域の中和能であることを明らかにした。
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Research Products
(2 results)