2006 Fiscal Year Annual Research Report
虚血性心疾患に対する心筋保護と心筋再生に関する研究
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06J53302
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
松久 誠治 関西医科大学, 医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 心臓 / 虚血 / 再潅流 / ミトコンドリア / アデノシン / 一酸化窒素 |
Research Abstract |
Ischemic preconditioning (IPC)の分子機序を解明することによりこれを薬理学的(pharmacological preconditioning ; PPC)に応用することをめざした。IPCによって惹起された膜分画でのPKC-εとSrcキナーゼの活性化は、PKCまたはSrcキナーゼの特異的阻害剤によって抑制された。PKC-εの不活化はIPGによる心筋保護効果を抑制したが、Srcキナーゼの不活化は心筋保護的に作用した。mitoK_<ATP>はIPGによって活性化された。mitoK_<ATP>の選択的阻害剤である5-HD前投与によるその不活化はPKC-εを不活化し、IPCによる心筋保護効果を抑制した。IPC及びmitoK_<ATP>開放薬であるDzはCK遊離を有意に抑制した。5-HDはIPC及びDzによるCK遊離の抑制を阻害した。Adenosine (Ad)またはnitricoxide (NO)供与体であるSNAP単独投与によるPPCでもPKC-εとmK_<ATP>の持続的な活性化はみられず心筋保護効果も得られなかった。しかし、DzはAdおよびSNAPの共存下にPKC-εの活性化とPPC終了後も持続するmK_<ATP>の活性化を惹起しIPCに匹敵する心筋保護効果をもたらした。この統合的PPCによる心筋保護効果は、Gi/oタンパクの阻害剤であるpertussis toxin、5-HDまたはNO消去剤であるcarboxy-PTIOによって抑制された。以上の結果から、PKC-εとSrcキナーゼはIPCの心筋保護効果に必須のシグナル複合体であるが、心筋保護の仲介役はPKC-εであると考えられた。mK_<ATP>の活性化はIPCの引き金であり、仲介役であると考えられた。mK_<ATP>、Gi/oタンパクと共役したレセプター刺激およびNOの組み合わせによる統合的PPCはIPCに代わる普遍的な心筋保護法になりうることが示唆された。
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