Research Abstract |
本研究では,事例ベースを利用したオンライン調停支援システム上で,調停を支援する調停者エージェントの実現に向け,発言内容を認識し発言の論理式を抽出する手法,発言認識機能と事例べ一スを利用した発言自動生成手法,調停モデルに沿って論争を行う論争エージェントを実装し,実験により評価を行った. 発言からの論理式抽出手法は,調停トレーニングにおいて用意される問題設定(調停テーマ)を背景知識として利用することで,高度な自然言語処理技術なしに,論理式抽出が可能である.発言テキストに含まれる話題(論点)と調停テーマに記述された論点関係,論争状況を考慮し,該当する論理式タイプ("P","〓P","P←Q","〓P←Q")と比較し抽出する.異なる3種の問題設定を元にした調停記録6件からの評価実験により,適合率88.2%,再現率90.5%という高い精度で抽出が可能であることを確認した. また,エージェントが調停に参加する際のルールベースとして利用可能な,「事実聞き出しモデル」「交渉・調停案作成モデル」を定義した.モデルは外部知識として定義・参照可能であり,複数のモデルを必要に応じ更新・組み合わせて利用することができる.理想形から逸れる場合でも,モデルと事例ベースの併用により,状況に応じて柔軟に対応できると考えられる. さらに,論理式抽出機能と事例べ一スからの類似場面を利用した発言自動生成機能を実現し,練習相手として調停に参加することのできる論争エージェントの開発を行った.本エージェントに特性(論理性,収束性,協調性)を与え,論争推移にバリエーションを持たせることが可能である.実験により,この特性が論争推移を変化させ,トレーニング効果を生む可能性を確認した.論争エージェントが持つ各機能は,調停者エージェントに必須であり,論争エージェントを発展させることで,調停者エージェントの実現が可能である.
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