2006 Fiscal Year Annual Research Report
公教育とイスラーム ヨーロッパの移民統合の破綻と異文化間教育の役割
Project/Area Number |
06J54122
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
見原 礼子 一橋大学, 大学院社会学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 比較教育 / 異文化間教育 / オランダ / ベルギー / フランス / イスラーム教育 / 公教育と宗教 / 多文化社会 |
Research Abstract |
ヨーロッパにおける宗教の多様性を踏まえた異文化間教育の方途を探るため、フランス・オランダ・ベルギーを対象として、これら三カ国における公教育構造の限界と今後の展望を比較考察することを目的として研究を進めている。本年度は主に次の研究を進めた。 まず、オランダにおける宗教の制度的位置取りを確認し、近年それがイスラーム的規範やイスラーム教育への対応をめぐって、いかなる変容の傾向を見せているのか検討した。この研究成果は、日本教育政策学会の年報に投稿論文として掲載された。また、共著『オランダ寛容の国の改革と模索』では、こうした議論が持つ意味や課題をオランダ社会全体のより大きな文脈に置いて論じた。並行して、フランス公教育における宗教の位置づけ、すなわちライシテ原理が、ムスリム女生徒のスカーフとの関連から生じている問題についても概括し、日本学習社会学会の課題研究論文として掲載された。 5月下旬からベルギーで実施した調査では、大学図書館や関連諸機関の資料室において、ベルギーの公教育史にかかわる数々の史資料にあたった。また、実際の学校現場で生じている課題や、試行中の取り組みを明らかにするため、多文化地域における公立学校を訪問し、学校関係者へのインタビューや参与観察をおこなった。さらに、教育政策に携わる国会議員らに対して実施したインタビュー内容から、本課題をめぐる今後の見通しを分析した。 秋以降はこれらの実証研究を発展させて研究論文としてまとめ上げ、2007年3月末に提出した。論文中では主に公教育構造に宗教的多元性が保持されているオランダとベルギーを対象としたが、両国の公教育とは対照的な制度を有するフランスについても若干の考察を加え、19年度に本格的に開始する研究の基礎的土台を築いた。また、この比較研究の基本的な枠組みは、共著『衝突と和解のヨーロッパユーロ・グローバリズムの挑戦』において提示した。
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Research Products
(4 results)