2007 Fiscal Year Annual Research Report
公教育とイスラーム ヨーロッパの移民統合の破綻と異文化間教育の役割
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06J54122
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
見原 礼子 Hitotsubashi University, 大学院・社会学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 比較教育 / 異文化間教育 / 宗教間対話 / オランダ:ベルギー:フランス / 宗教教育 / イスラームフォビア / ムスリム移民 |
Research Abstract |
平成19年度は、平成18年度で明らかにしたオランダ、ベルギー、フランスの公教育における宗教の構造的位置づけの違いと宗教的規範や宗教教育に対する処遇の違いを踏まえ、主に二つの課題に取り組んだ。 第一の課題は、前年度に引き続き、各国の公教育の場でイスラームへの対応をめぐって生じている個別の問題や矛盾を国民・市民の育成と「普遍的」価値の伝達という近代公教育の機能の観点から捉え直すことにより、共通して表出している傾向を抽出することであった。一連の分析から、これらの国におけるムスリム移民の統合をめぐる共通した論点とその論点に含まれるイスラームフォビア的な思考様式を指摘した。これらの研究成果は主に平成19年度の前半に行った日本国内での研究活動を通じて公表した。 第二の課題は、これまでの研究成果を踏まえて、個人の信仰や宗教的規範の違いを考慮に入れた公教育での異文化間教育のありかたを展望することであった。この課題は、ヨーロッパ社会の世俗化やムスリム以外の信徒の存在など、他の様々な諸要素をも考慮し多角的に考察すべき複雑な内容である。本課題に取り組むため、平成19年度後半からはフランス国立社会科学高等研究院のPD研究員として籍を置き、特に宗教学や宗教教育学の知見を深めることにより、本課題に関わる基礎的研究を進めることが可能となった。具体的には、宗教を基盤とした異文化間教育の質的条件(信仰をどのように、またどこまで扱うか)と、構造的条件(信仰をどのような場で扱うか)をめぐる萌芽的研究を行い、その成果を同研究院の研究会で報告し、宗教学研究者や教育学者などから輻広い意見やコメントを得ることができた。
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Research Products
(6 results)