2006 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝子変異マウスを用いたWtapの選択的スプライシング制御機構の解析
Project/Area Number |
06J54132
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
福住 好恭 金沢大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | Wtap / Cyclin A2 / 中胚葉形成 / Wntシグナル |
Research Abstract |
Wilms' tumor-1 associating protein(以下Wtap)遺伝子は、ウイルムス腫瘍の原因遺伝子であり腎の発生に必須なWilms' tumor 1をベイトとした酵母two-hybrid法によって単離された。Wtapは、スプライシングを制御する役割があることが示唆されているが、生体内での機能は未だ解明されていない。私は当研究室で開発された改良遺伝子トラップ法を用いてWtap遺伝子変異マウスを作成し、これまでにWtap変異胚は原腸陥入期において中・内胚葉マーカーの消失を生じ,致死となることを明らかにした。本年度は、Wtap変異ES細胞を用いてin vitroにおける分化能力を解析した。また、他の研究グループからWtapがヒト臍帯血管内皮細胞(HUVEC)において細胞周期のG2/M期の転換に必要なcyclinA2のmRNA安定性に関与し、Wtap変異マウス胚はcyclinA2 mRNAの枯渇が原因で致死となるという仮説が提唱されたので(PNAS103:17278-83,2006)、細胞周期におけるWtapの機能についても、マウス胚及びES細胞を用いて検討を行った。 1.Wtap変異ES細胞の分化能力の検討 Wtap変異ES細胞から胚様体を形成させ、三胚葉全ての細胞種の分化誘導を試みた。その結果、変異ES細胞では前方神経外胚葉マーカーであるOtx2の発現は誘導されたが、Foxa2、Sox17、Brachyury、MixL1といった内胚葉と中胚葉形成に必要な遺伝子発現が誘導されなかった。さらに、Foxa2とBrachyuryの上流因子であるWnt3の発現も誘導されなかった。 2.Wtap変異の細胞周期制御に対する影響の解析 マウス胚におけるcyclinA2 mRNAの発現をRT-PCR法により解析を行ったが、Wtap変異胚においてcyclinA2 mRNAの発現はコントロール胚と変わらないことがわかった。さらに、Actinomycin DをES細胞で処理しcyclinA2 mRNAの安定性を解析したが、コントロールES細胞と明らかな差は見られなかった。 昨年度及び1と2の結果から、Wtap変異胚は内胚葉と中胚葉の分化が誘導されないために致死となることが示唆され、これらの研究成果をDevelopment誌に投稿予定である。現在、Wtapの脳神経系における役割を解析するために、Wtap変異ES細胞を用いたキメラ解析により脳神経系細胞への分化能力の解析を始めている。
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