2006 Fiscal Year Annual Research Report
西洋磁器の製造における柿右衛門様式磁器が与えた影響
Project/Area Number |
06J54282
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
古賀 裕子 九州産業大学, 芸術研究科, 特別研究員DC2
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Keywords | 柿右衛門様式磁器 / 土型 / 型押し成型 / 人形 / 西洋磁器 |
Research Abstract |
本研究は、柿右衛門様式磁器の中でも型物製品に着目し、これらの輸出先であった西洋に型物がどのような影響をもたらしたのか技術的な観点から考察するものである。 本年度は、柿右衛門様式磁器の型物である特に人形の型成形方法について調査研究を行った。 柿右衛門様式磁器の人形の型成形方法は現在使用されておらず、その方法についての詳細は明らかではない。そのため、有田町歴史民俗資料館、酒井田柿右衛門家、佐賀県立九州陶磁文化館、福岡市美術館、大阪市東洋陶磁美術館、愛知県陶磁資料館等の諸機関へ赴き、有田町出土の土型や陶片、日本に遺る伝世品の資料調査を行った。さらに、現在でも柿右衛門様式磁器の人形と同じ成型方法を用いて製作する土人形も調査し、柿右衛門様式磁器の人形の成形方法の分析を行った。又、九州陶磁文化館蔵の「色絵葡萄文婦人立像」を元にNCを使用した再現製作に取り組み、本年度は、原型の製作、土型の製作まで実施した。 その結果、柿右衛門様式磁器の人形は、頭部・胴部・手部に分割し成形されていたことが判明した。これは、同成形方法である当時の土人形には見られない特徴であり、柿右衛門様式磁器の人形が他の型成形による日本人形にも見られないため、日本人形史において当時の新しい技法であったことが明らかとなった。又、柿右衛門様式磁器の人形の衰退理由を色絵婦人像の変遷から考察した結果、西洋人にとって色絵婦人像の形状は変化に乏しく、そのため、装飾華美を好む西洋において衰退していった一因であるという結論に至った。しかしながら、西洋では17世紀後半に日本から多数の人形を輸入し西洋において磁器生産が始まってから現在に至まで、磁器人形が盛んに生産され続けている。そのため、次年度は柿右衛門様式の型物が西洋の型物に与えた影響について、今年度の調査研究を基に再現製作と併せ、西洋の技術について研究を行う。
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