1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07041137
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
石田 英実 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (60027480)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ミィーブ リーキー ケニア国立博物館, 古生物学研究部門, 部長
国松 豊 京都大学, 霊長類研究所, 助手 (80243111)
中務 真人 京都大学, 大学院・理学研究科, 助手 (00227828)
仲谷 英夫 香川大学, 教育学部, 助教授 (20180424)
沢田 順弘 島根大学, 総合理工学部, 教授 (80196328)
星野 光雄 名古屋大学, 情報文化学部, 助教授 (40023626)
牧野内 猛 名城大学, 理工学部, 講師 (50131214)
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Keywords | 中新世 / 人類起源 / ホミノイドの進化 / 古環境 / 霊長類化石 / ケニア / ナチョラ地域 / サンブル・ヒルズ |
Research Abstract |
人類起源の時と場所は長く謎に包まれていたが、人類学をはじめとして古生物学、分子生物学などの長足の進歩によりようやく焦点が絞られ、中新世後期のアフリカがその最有力候補となっている。本調査の目的は、ケニアにおいて人類を生み出した中新世ホミノイドの進化を探りつつ、その延長戦上に人類の起源を求めるものである。具体的にはわれわれ日本の調査隊がこれまでに発見した大量のケニアピテクス化石、それに大型ホミノイド化石の産出地である北ケニア、ナチョラ地域とサンブル・ヒルズでの調査の続行、および各地博物館における比較資料の収集である。 当初の計画に対して、サンブル・ヒルズでの調査は突発的な出来事から遂行不能となった。これはケニアの軍隊がサンブル・ヒルズを含めたスグダ地域において大規模な家畜窃盗集団の掃討作戦を展開し、この地域へのわれわれ調査隊の立ち入りを禁止したことによる。このため、今回の発掘調査はナチョラ地域に限定されることとなった。 しかし、成果の方は以下に記すようにたいへん意義深いものとなった。第1には、1500万年前のアカ・アイテパス累層からケニアピテクスの成獣メスの上顎と下顎の完全な化石が発見されたことである。これまで完全な上、下顎骨化石が未発見であったためヒト科とヒト上科を分ける形態特徴の一つとされる歯列弓の形状が、ケニアピテクスではこれまで明確ではなかった。しかし、この発見から歯列弓はU字状であることが明確となり、ケニアピテクスの類人猿説がさらに補強されることなった。 第2は、ケニアピテクスの四肢、体幹骨化石の発見であり、その一つが尺骨で、完全な近位端が残っていた。これはケニアピテクスの運動様式が走行型の四足性傾向をもっていたことを示し、全体として樹上性が優勢であるものの、地上性をも持ち合わせていたことを示すものである。 各地博物館での調査研究の成果も当初の計画を大きく上回り、その結果はナチョラのケニアピテクスは新種であり、乾燥化に向かっていた中新世中期の東アフリカにあって、その環境に適応放散しつつある状態を示すという見解を支持するものであった。 ナチョラ地域では、アカ・アイテパス累層での発掘調査のほかに、ナチョラ累層での化石調査も行った。その結果、霊長類化石はアカ・アイテパス累層からのみ出土することを再度確認することとなった。
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Research Products
(12 results)
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[Publications] H.Ishida et al.: "Fossil mammals from the Neogene strata in the Sinda basin." Afr.Stud.Monog.Suppl.Issue. 17. 87-107 (1992)
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[Publications] 石田 英実: "人類の析出に向けて(1)ケニアピテクス" JANESニュースレター. 3. 3-4 (1993)
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[Publications] 石田 英実: "人類の析出に向けて(2)ニアンザピテクス" JANESニュースレター. 4. 2-3 (1994)
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[Publications] 石田 英実: "なぜヒトが人になったか" 科学朝日. 54. 14-16 (1994)
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[Publications] 石田 英実: "人類の析出に向けて(3)サンブル・ホミノイド" JANESニュースレター. 5. 2-3 (1995)
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[Publications] H.Ishida et al.: "Kenyapithecus Postcranial Specimens from Nachola,Kenya." Afr.Stud.Monog.Suppl.Issue. 24. 3-56 (1996)
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[Publications] H.Ishida et al.: "Three-Dimensional Morphology of the Sigmoid Notch of the Ulna in Kenyapithecus and Proconsul." Afr.Stud.Monog.Suppl.Issue. 24. 57-71 (1996)
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[Publications] Y.Kunimatsu: "New finds of a small anthropoid primate from the Nachola,Northern Kenya." Afr.Study Monographs. 13. 237-249 (1992)
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[Publications] Y.Sawada: "Quaternary volcanoes and faults in the Kenya rift from the air." Earth Science. 49. 1-6 (1995)
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[Publications] Y.Sawada et al.: "Carbonatites in the East Africa and Mongolia." Earth Science. (in press)
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[Publications] H.Nakaya: "Faunal change of late miocene Africa and Eurasia:mammalian fauna from the namurungule formation,Samburu Hills,Northern Kenya." Afr.Stud.Monog.Suppl.Issue. 20. 1-112 (1994)
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[Publications] M.Nakatsukasa: "Morphology of the humerus and femur in african mangabeys and guenons:functional adaptation and implications for the evolution of positional behavior." Afr.Stud.Monog.Suppl.Issue. 21. 1-61 (1994)